よく考えなければならない「学ぶもの」と「学び方」の関係
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「起業セミナーに関するトラブル」が増えているという話題を目にしました。
きちんと運営されていて、内容が充実して有意義なものもあると思いますが、トラブルが増えているということは、そうではないものが多いということでしょう。
高額な受講料を請求するものもあるそうで、受講する側も注意する必要があります。
起業セミナーでは、それを実行するために必要な知識、スキルを得たい場合もあるでしょうが、どちらかといえば、事業の成功につながるようなノウハウを得ることが目的で受講する人が多いのではないでしょうか。
この手のトラブルは、そのセミナーで提供されるものと受講者の期待がずれている、費用対効果がずれているということが大半ですが、起業や経営などというものが対象のセミナーでは、何か具体的なスキルを学ぶ内容でない限り、セミナーから得られる成果があいまいになりがちです。
成果があいまいな場合、受講者が過度な期待をしたり、業者が過剰な宣伝をしたりという問題が起こりがちです。そこにはお互いの誤解が混じっていることもあるでしょう。
企業や経営というテーマで、そこに影響する変数的な要素は膨大にありますから、そもそもセミナーで教わる程度のノウハウで、簡単に成功するほど甘いものではありません。
ここで考えたのは、「学ぶもの」と「学び方」の関係です。
例えば語学であれば、目指す成果は「読める、話せるようになること」とはっきりしているので、あとはそれをどうやって学ぶかという方法の問題です。
英会話学校などは世の中にたくさんあり、学校や教師の評判などはいろいろありますが、自分が上達しないのは「あの学校のせい」「あの先生のせい」という人は、あまり見たことがありません。やはり自分の学び方に問題の大半があると考えるからでしょう。
動かない位置にゴールがあるので、あとはそれを目指して自分なりの学び方を考えるしかありません。学校、独学、個人指導、留学、その他いろいろな方法の中から「学び方」を考えていきます。
その一方、起業や経営などとなると、目指す成果はその人が求めるものによってバラバラです。会計や法律などの知識もありますし、ビジネスモデルや事業そのものに関すること、営業や人事といった組織運営の話もあります。それらは市場や景気動向、業界事情などの外部要因に左右されることもあり、その時その時の状況によって、できることややるべきことには違いがあります。ゴールが常に動いているようなイメージがあります。
そうなると、「学ぶもの」によって「学び方」を変えていかなければなりません。もちろんセミナーで学べるものはありますし、よく事情を知った人から個別にアドバイスを受けた方が良い場合もあります。書籍や独学が適した場合もありますし、事前に学ぶのは難しく、自分で試行錯誤するしかないこともあります。
これは企業の人材育成でも同じで、何でもかんでもOJTではなく、費用、場所、時間、効果を考慮して、あるものはこうやる、別のものではこうするなど、テーマによって育成方法をアレンジします。
起業セミナーのトラブルは、セミナー形式の学び方がふさわしくないテーマを扱っていたり、それをあたかも身に付くがごとく宣伝している業者がいたり、教え方が悪かったり、何でも教えてもらえると考える依存心の高い受講者が集まってしまったりするなど、「学ぶもの」と「学び方」の関係が適切でないケースが増えているのではないでしょうか。
あらためて考えると、「学ぶもの」と「学び方」の関係は、教える側も教わる側も、ともによく考えなければならない大事なことだと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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