「サイレントお祈り」をする会社に共通して見えること
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就職活動をしている中で、不採用通知の文末に必ず「・・・をお祈りいたします」とあるために、それを指して“お祈りメール”などといいれます。
さらに「合格だったら連絡します」といって、不採用通知すら送られてこないことを、無言の仕打ちであることから「サイレントお祈り」と言われます。
この行為自体はずっと前から存在しましたが、言葉として言われるようになったのは数年前からです。当然応募者からの評判はすこぶる悪いですが、相変わらず「サイレント」を続ける会社はたくさんあります。どちらかというと大手企業の方が多いと言われ、その企業名を告発するサイトもあるようです。
なぜ「サイレントお祈り」をやるのかといえば、それは企業の採用担当の一方的な都合だけです。いちいち連絡する手間を省きたいか、辞退者に備えてとりあえず手元の候補者をキープしておきたいか、だいたいはこのどちらかです。
自分が合格なのか不合格なのかを期待と不安で待ち続け、しかもそれをいつまで待てばよいのかわからない訳ですから、応募者にとっては一番腹立たしい行為でしょう。
これをされた応募者の中には、その会社の製品を絶対に買わなくなったり、店舗を利用しなくなったり、テレビCMはチャンネルも変えてしまったりと、かなりの恨みをかうこともあるようですが、その企業を真面目に志望していた人ほど、そういう気持ちになってしまうのはわかります。
私が企業の採用活動をお手伝いする中でも、この「サイレントお祈り」を、全く問題とは思っていなかったり、無頓着であったりする会社は確かに存在します。
私からは、この行為が会社の評判を落とすことになるので、絶対にやらないように指導しますが、それをあまり納得しない会社があります。
そういう会社の社内の様子を観察していると、共通していることはあります。採用活動に限らずすべてにおいて、上意下達の一方的な強制が普通のことになっているのです。
通達や業務命令という書面がやたらと多かったり、何か仕事上のことで、特に部下や一般社員の事情を聞いたりはしません。こちらの都合で取引業者に無理な値引きを求めたり、一方的な取引条件を突き付けたりします。
社内では、権威に頼ったマネジメントをするので、良いリーダーが育たず、社外からは何かと付き合いづらい面倒な会社とみられます。
「サイレントお祈り」に通じるような行動が、社内のあちこちで行われていて、まさに一事が万事です。
就職活動の中で出会う社員は一部の人であり、それが会社全体を示している訳ではないという人がいます。確かにみんながみんな威張っていたり、自分勝手だったりということはないでしょう。
その一方で、やはりその会社が持つ全体的な傾向は確実にあり、「サイレントお祈り」をするような会社は、それを許容する雰囲気をどこかに持っています。逆にそういうことは絶対に許さないという会社もあり、それが企業風土、社風ということです。
もしも私が就職活動をしていて、「サイレントお祈り」をする会社に出会ったとしたら、どんなに評判が良い会社であっても、絶対に入社しません。
横柄な態度は、いつか自分たちが損をする形でかえってきます。他者へリスペクトがない会社に、私は共感できませんし、あまり将来性も感じません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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