平成27年7月1日以降の相続又は遺贈において、非居住者が相続又は遺贈により取得した場合、対象となった有価証券の含み益に対して、被相続人に所得税が課税されます。
概要をまとめてみました。
1.対象者
次の(1)と(2)の要件をいずれも満たす者
(1) 相続時の有価証券等の時価が1億円以上
(2) 相続開始10年前のうち、5年超国内に住所等があった者
2.対象資産
(1)有価証券(株式、投資信託等)
(2)国債、地方債(平成28年から課税対象。1億円以上かどうかの金額判定に含める)
(3)匿名組合の出資持分
(4)未決済の信用取引、デリバティブ取引(FX、先物やオプションなど)
3.申告手続き
被相続人の相続人は、相続開始の日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告し、所得税の確定申告及び納税をすることになります。
4.納税猶予制度
相続開始の日の翌日から4ヶ月以内に、非居住者の相続人等の全員が、納税管理人を定める必要があります。
納税猶予分の所得税及び利子税の額に相当する担保を提供することにより、納税が相続開始の日から5年間猶予されます。
また、相続開始のから5年を経過する日までに、納税猶予期間の延長の届出をすることで、更に5年間納税猶予期間を延長(合計10年)することができます。
なお、非居住者である相続人等は納税猶予期間中、引き続き納税猶予の特例の適用を受けたい旨を記載した届出書(継続適用届出書)を同日の属する年の翌年3月15日までに、毎年所轄税務署へ提出する必要があります
5.納税猶期間中に死亡した場合
納税猶予を受けていた相続人等が納税猶予期間中に死亡した場合、納税猶予分の所得税額の納付義務は、納税猶予の特例の適用を受けていた方の非居住者である相続人が承継します。
その非居住者である相続人は、相続開始の日の翌日から4ヶ月以内に納税管理人の届出をする必要があります。
納税猶予の期間については、亡くなった方の残存期間を引き継ぎます。
なお、相続等により取得した者がすべて居住者である場合は、出国税の課税の取り消しをすることができます。
このコラムの執筆専門家
- 大黒たかのり
- (東京都 / 税理士)
- 大手町会計事務所 代表税理士
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