最近いろいろなところで、「自分とは意見が違う人と話し合うこと」を避ける傾向が多いと感じています。
自分と意見が合う人、気が合う人は自分の「身内」として、頻繁に意見を聴いたりコミュニケーションを取ったりしますが、自分の考えとはちょっと違うとなると、一気に「他人」の扱いでコミュニケーションを取らなくなります。「身内」の意見は良く聴くけれども、「他人」の意見はほとんど聴かないという極端な感じです。
この結果としてどんなことが起きるかというと、これが会社であれば、組織全体のコミュニケーション不足であり、さらに進むと他責傾向、セクショナリズム、情報や人の囲い込みなどが始まります。
この話との共通点を感じることに、「公共の場での人の振る舞い」があります。電車内などで飲食をしたり化粧をしたり、まるで自分の部屋にいるような振る舞いに出会いますが、この理由として「どうせ他人しか見ていないから」ということがあるのだそうです。
「他人」だから、別に見られても恥ずかしくはないし、どう思われても大して気にならないし、どうせもう二度と会わないし・・・などという感覚です。自分の視野の中にあるのは「身内」ばかりで、「他人」のことは、軽視している感じがします。
組織で物事を決めるために、その良し悪しはあるものの、時には事前の根回しも必要で、そのためには相手の説得や歩み寄りも必要になります。
相手の考え方やその背景などを知らなければ、説得も歩み寄りもできませんが、「身内」に対してはそれができても、「他人」に対して、その立場や考え方を理解するということは、苦手な人が増えているように感じます。
みんな仲良しで気心知れた「身内」ばかりの組織であれば、「他人」のことなど考える必要はありませんが、普通であれば、組織の中には「身内」も「他人」も混在しています。
いろいろな会社で実際に議論する場面を見ていると、一方的に自分の主張ばかりするが、では具体的にどうするかといったときに、落としどころを全く考えていないことが増えているように思います。
「身内」に通じる話はできて、その中ではそうだ!そうだ!となるけれど、少しでも「他人」が混じると、議論が急激に滞ってきます。やたら攻撃的になったり、逆に全く黙ってしまったりします。
どうも最近、「敵」と「味方」、「身内」と「他人」というように、相手との関係性を単純化した枠組みに押し込めようとする傾向が強いように思います。しかしこれでは部分最適にすることはできても、全体最適にはなりません。
「あの部門は・・・」「あの部長は・・・」「あの社員は・・・」などと線引きしてコミュニケーションを避けていると、組織全体としての調整能力はどんどんなくなり、部分最適ばかりの誤った方向に進んで行きかねません。
今ある「身内」と「他人」の壁は、もう少し低くなっても良いのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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