「人材開発」という言葉を聞いたとき、皆さんはどのような捉え方をされるでしょうか。「人事の中の一機能」「社内研修担当」という感じが多いのではないでしょうか。中には「役に立つのかわからない研修を自己満足で企画しているような面倒な部門」などという否定的な捉え方もあるようです。
ただ、「人材開発」というのは、社内研修などと言う狭い話ではなく、“企業戦略に合致した人材像を定め、それに則った人材育成戦略を定めて実行する”ということが本来の定義です。
そう考えると、どんな人材を採るかという採用、どんな人材を評価し、どんな処遇をするのかという人事制度、どんな役割でどんな仕事をどこでやらせるのかという配置や異動、個々の現状のスキル把握と育成方法の検討など、組織の「人」についての全てのことが関わってきます。
しかし現実には、「人材開発」というセクションがあったり、担当者がいたとしても、ここまでの役割を与えられていることは多くありませんし、実際に「人材開発」を担当している人の意識も同様ではないかと思います。
社内を自分たちの目線で見渡し、関連部署の意見を聴き、「マネジメント能力が足りないから」といってリーダーシップ研修、「コミュニケーションが足りないから」といってコーチング研修など、研修企画担当という範囲で、あまり体系的とは言えない取り組みに専念していることがほとんどです。
実は私が企業人事の時代も、「人材開発」に対する意識はまさにこのままでした。ですから今の立場ではなおさら強く感じるのは、“組織人材の高度化”を考えた時、本来の定義での「人材開発」の取り組みは非常に大切だということです。
「人材開発」というテーマの捉え方をもっと広げ、担当者にも相応の権限を与えた上での体系的な取り組みが必要ということです。もちろんそのためには、「人材開発」の本質を理解した専門人材もいなければならないでしょう。
ともすれば専門性はあまりないと見られ、社内ローテーションの中で誰かが腰掛けで担当していくような扱いになってしまう「人材開発」という仕事ですが、本来は「企業の人事戦略の中心を担う」というとても重要な役割です。そのことをもう少し強く認識する必要があるのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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