外れ馬券も必要経費!?(大阪地裁平成25年5月23日判決) - 確定申告・税務代理 - 専門家プロファイル

平 仁
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外れ馬券も必要経費!?(大阪地裁平成25年5月23日判決)

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発表 実務に役立つ判例紹介

ニュースでセンセーショナルに取り上げられていますが、

はずれ馬券が必要経費として認められた判決が出ました。

大阪地裁平成25523日判決です。

 

しかし、判決を読むと、ニュース報道に???

 

「原則として、馬券購入行為については、所得源泉としての継続性、

恒常性が認められず、当該行為から生じた所得は一時所得に該当する」が、

「被告人の本件馬券購入行為は、一般的な馬券購入行為とは異なり、

その回数、金額が極めて多数、多額に達しており、その態様も

詳細な分析結果等に基づく、利益を得ることに特化したものであって、

実際にも多額の利益を生じさせている。

また、そのような本件馬券購入行為の形態は客観性を有している。

そして、本件馬券購入行為は娯楽の域にとどまるとはいい難い。

以上を総合すると、被告人の本件馬券購入行為は、一連の行為として見れば

恒常的に所得を生じさせ得るものであって、その払戻金については、

その所得が質的に変化して源泉性を認めるに足りる程度の

継続性、恒常性を獲得したものということができるから、

所得源泉性を有するものと認めるのが相当である。」として、

一時所得として課税すべきとする課税庁の主張を退け、雑所得と認定した。

 

必要経費性については、「当たり馬券の購入費用が払戻金を得るために

「直接に要した費用」として必要経費に当たることは明らかである。」

とするのみならず、「被告人の本件馬券購入方法からすれば、

本件においては、外れ馬券を含めた全馬券の購入費用は、

当たり馬券による払戻金を得るための投下資本に当たり、

外れ馬券の購入費用と払戻金の間には費用収益の対応関係がある

というべきである。もっとも、外れ馬券の購入費用は、

特定の当たり馬券の払戻金と対応関係にあるというものではないから、

「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」として

必要経費に該当する。」と判断している。

 

つまり、一般論から言えば、当たり馬券に対する課税は、

課税庁の主張するように一時所得に当たり、当たり馬券の購入費用だけが

必要経費として控除されるが、本件のように、継続的・恒常的に

所得を生じさせ得るような実態がある場合に限っては、雑所得であり、

外れ馬券も含めた購入費用等が必要経費になり得る、と判示したのです。

 

多くの競馬ファンが、外れ馬券を必要経費にして赤字を申告できると

勘違いしているかもしれませんが、

そもそも雑所得はマイナスを他の所得と相殺することができませんから、

外れ馬券を使って節税をすることはあり得ません。

せいぜい、穴をとって課税対象とされた際に、トータルでは赤字なので、

ということができる、と言えるにすぎません。

また、当然に外れ馬券の購入の証拠が必要ですから、継続的な帳簿の作成

ないしは外れ馬券の保存が必要になる、ということを忘れてはなりません。

 

また、本件は刑事事件であり、本件被告が、申告の必要性を認識しながら

申告をしなかった脱税犯として、

懲役2月執行猶予2年の刑を下されていることにも注意して頂きたい。

必要経費性が認められたおかげで脱税額が大幅に軽減されたとはいえ、

脱税犯の事例なので、ギャンブルで勝った経験のある方で、

一時所得として申告していない方には、背筋が凍る事件でもあるわけです。

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