- 山本 憲宏
- 山本公認会計士事務所 所長
- 滋賀県
- 公認会計士
対象:会計・経理
昨日までで「中小会計要領」の解説を一通りさせていただきました。
今日は、「中小会計要領」の補足ということで、総論の「8.記帳の重要性」について会社法もしくは商法の側面から考えたいと思います。
「8.記帳の重要性」は次のように記載されています。「本要領の利用にあたっては、適切な記帳が前提とされている。経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要である。記帳は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければならない。」
正規の簿記の原則といわれているものにおいて記帳の重要性を示している規定だといえます。中小企業においては記帳の重要性について認識していない企業が多いため、「中小会計要領」においてあえて記帳の重要性をうたっていると考えます。
そもそも、会社法432条において、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と規定されています。また、商法19条2項においても、「商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。」と規定されています。そのため、個人事業主であろうと会社であろうと適時に会計帳簿を作成しなければならないのです。この会計帳簿を具体的な定義づけが商法においても会社法においてもなされていない。しかし、一般的な意味での帳簿や補助簿が含まれていると考えるのが自然であると思われます。
また、会社法432条や商法19条2項において「正確な会計帳簿もしくは商業帳簿」を作成しなければならないとされています。ここで、「正確」とは、一般的には、会計帳簿に記載すべき事項が漏れなく記載され、かつ、その内容が事実に相違ないことをいっています。すなわち、会計帳簿の段階でも虚偽記載を行うことは会社法違反となるのです。
さらに、会社法432条や商法19条2項において会計帳簿もしくは商業帳簿を「適時に」作成しなければならない旨規定されています。この「適時に」についての具体的な内容は会社法もしくは商法に定められていません。しかし、一般的には、取引と記帳との間の時間的間隔について通常の時間内であることが要求されているといえます。具体的には、現金取引など、一般的に証拠となる外部資料の網羅性が乏しい取引については、取引が発生した後、可能な限り速やかに現金残高等を確認の上記帳すべきであります。また、信用取引についても、帳簿(売掛帳や買掛帳のことです。)の集計時等を踏まえた適切な時期に記帳すべきであると考えられます。すなわち、現金出納帳については、毎日つけていくことが求められますし、預金についても随時記帳を行うことが求められていると考えられます。年に一度の記帳もしくは数ヶ月に一度の記帳ということは会社法もしくは商法に違反しているといえます。
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