小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ方針が示されないから制度が作れない?
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今までいろいろな会社で人事制度策定のプロジェクトを実施してきましたが、初めに必ず、その制度のそもそもの目的や理念といったもののコンセンサスを作り、文書にまとめる作業をします。
「いま見えている課題をつぶす」という単なるパッチワークの意識に陥ると、制度本来の目的からどんどんずれていってしまうからです。
「人に優しい」と言っていたのに、全然優しくなかったり、「自律」と言っていたのに、強制や押し付けの仕組みになっていたり、「成果に報いる」と言っていたのが、影も形もなくなっていたりといったことは、制度を作る中ではたくさん起こります。これを少しでも避けるために、そもそもの方針や考え方を文書などの形で残しておくことは、それなりに重要なことです。
人事制度作りは、経営陣と直接やり取りをしながら進めることもありますが、人事部などを主管とした「人事制度プロジェクト」などで行うことも数多くあります。
こういうプロジェクトで、制度理念や人事理念といったものを話し合う時、よく出てくるのは、「社長から方針が出てこないからわからない」「自分たちでは決められない」という話です。
それは確かにその通りで、もっと言えばどんな事業をどんな人員構成で、どのような人材を求めてどのように育成していくのか、どのくらいの事業規模でどの程度の人件費予算をかけるのかなど、短期中期の経営戦略や事業計画によって、人事制度の中身は大きく左右されます。制度理念や人事理念といったものは、それらの戦略、計画と密接にかかわりますが、プロジェクトメンバーが「自分たちでは決められない」というのは当然です。その一方、これをそのまま放っておくと、多くのプロジェクトメンバーがそこで思考停止に陥ってしまいます。
そもそも会社に対して「方針を出してほしい」などと要望しても、そんなものが簡単に出てくることはありません。作られた計画を見て考えろと言われるか、もし何か出てきたとしても、それほど具体的ではないことがほとんどです。
こんな時にどうしているかといえば、それはとても簡単なことで、「制度理念は会社方針を想定してプロジェクトで作りましょう」ということです。
本来あるべき形に導かない上司を批判しても構いませんし、批判によってすぐ望ましい方向に変われば良いですが、多くの場合はそうなりません。他責の論理ではおおむね先に進まなくなります。
それならば、いま見えている材料の範囲で、とりあえず自分たちで組み立ててみて、それに対する判断を仰げばよいことです。ピントがずれていると言われたら、「ではピントはどこか」を確認すればよいですし、特に指摘がなければそのまま進めればよいだけのことです。
仕事の進め方としては、ごく当たり前のことですが、経営にかかわるようなテーマになると、他責や依存の姿勢がつい強まってしまうことがあります。特に人事制度構築のようなプロジェクトでは、こんな様子をよく目にしてきました。
しかし、結局は自分たちの仕事であり、上からの動きを待っていては何も進みません。自分が経営者になったつもりで、主体的に動くしかありません。
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