小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「悪気のない不作為」が業績を悪くする
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最近は「働かない○○」など、仕事に真面目に取り組まない者が、増えているかのような話があります。
人間ですから、多少のサボりや緩みはもちろんあるでしょうが、実際はそれなりに真面目に働いている人が大多数だと思います。特に日本の企業では、おしなべて真面目で信頼できる社員が多いのではないでしょうか。
どんな会社もそうですが、大多数の社員は、基本的には真面目に一生懸命働いています。ただ、どんなに立派な会社であっても、その真面目で一生懸命なことが、本来やるべきことと結びついていない場合があります。業績の伸び悩みや悪化の要因は探っていくと、ほとんどがここに行き当たります。
「本来やるべきこと」を「やらないでいること」が、その会社のスタンダードになっていて、他の会社であれば、やられていて当然のことが、その会社ではやらずに放置されています。しかし、当の管理者や社員は、真面目に一生懸命やっているつもりですし、そもそも「やるべきことがやられていない」という状態に気づいていません。
これは、数千人規模のある大企業でのことですが、社内で起こっている問題をいろいろ聞いていく中で、管理数値の集計の一部が、未だに手作業でやたらと時間がかかったり、情報自体がなかったりしていたことがありました。
当然ですが経営判断は遅れますし、現場の人たちも状況把握に困るはずですが、それを改善しようという動きにはなかなかなっていません。予算の問題や部門間の調整に関する問題はあるにしろ、動き自体が非常に鈍い感じです。
なぜそうなってしまうかを見ていると、みんなそのことに対する問題意識はある一方で、相応の組織体制を持ち、「自分たちはやるべきことはきちんとやっている」という意識があるせいか、普通はできていて当たり前のことが、実は自分たちはできていないということには、やっぱり気づいていません。
たまに気づく人がいると、そのほとんどが転職組の人たちですが、そんな人たちでも、徐々に慣れてしまうのか、少数派だから声が届かないのか、だんだん何も言わなくなっていきます。
実態として、当たり前のことをやらずに、サボっているのと同じになってしまっています。
業績が思わしくないという会社の様子を見ていると、こんな「悪気のない不作為」ということに、あちこちで行き当たります。
著名な経営者の経営論などを見ていても、その多くに「当たり前のことをいかにきちんとやるか」ということが挙げられています。しかし実際には、「それが当たり前のことだと気づいていない」「やっていると言いながら実はやっていない」ということが意外に多いものです。
「私たちはやっている」と思っていても、本当にそれを「やっている」のか、実はそれが「悪気のない不作為」になっていないか、今一度見直すことが必要ではないでしょうか。
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