小笠原 隆夫
オガサワラ タカオある会社の「怒鳴る部長」は、結局感情だけだった
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少し前のことになりますが、ある会社の部長さんに関するお話です。
この方、とにかく自分の部下を怒鳴るのです。私のような外部の人間が近くにいたとしてもお構いなしです。今であれば確実にパワハラとして扱われてしまうと思われるレベルでしたが、それがそのまま通ってしまっていたようです。
たまたま怒鳴っている内容を聴いてしまった時、その中身は些細なことも大事なこともいろいろでしたが、普通に話せばよいだろうと思うことでも、何となくきつい口調で話し始め、すぐに怒鳴り口調に変わっていきます。
会社の中での怒鳴り声というのは、だいたい必要以上によく聞こえるもので、まったく関係がない人まで気にしだし、社内の雰囲気はどんどん悪くなっていきます。
当然ですが、この部長は周りからは避けられるような存在になっています。たぶんご本人もその状態をわかっているはずですが、自分の振る舞いは変えようとしているようには見えません。
そんなある日、この部長と直接お話する機会がありました。私がその時扱っていたテーマとは直接関係はなかったものの、人事コンサルタントの立場での情報収集として、インタビューをしたときのことでした。
私がその部長を見ている中で思っていたのは、「部下から嫌われてもあえて怒鳴るのは、何か意図していることがあるのではないか」ということでした。
言い方に問題はあるものの、言わんとしていることは、それほどおかしくはありませんでしたし、何か真意がなければ、あのようなコミュニケーションの取り方はしないだろうという思いもありました。
そして部長とお話した結果、私の思っていたことは、見事にすべて裏切られました。別に真意など何にもなく、結局は「ただそういう性格の人だ」ということでした。
部下や周りから避けられていることも、雰囲気を悪くしていることも自覚しておらず、ただ「自分の思い通りに運ばないことに耐えられず、そうなるとつい感情的に反応してしまう」というだけで、管理者にしてはいけない人、組織で共に働くのは難しい人というだけのことでした。
後から聞いた話ですが、この部長は、経歴上の実績を買われて中途採用された人だそうで、その会社で管理職を中途採用したのは初めてのことだったそうです。
面接の場では自分の合否がかかっていますから、怒鳴るようなことはしないでしょうし、普通にきちんと話す力があって、職務経歴もそれなりとなれば、面接だけで見抜くことは難しかったのだと思います。
この部長の入社してからの振る舞いには周囲もびっくりしてしまい、どう対応するかを上層部で検討している最中だったということでした。結局この部長は、その後ご自身がいづらくなって辞めていきましたが、過去にいた会社でも同じようなトラブルがあったようです。
ここでの私の学びは、「事情を考えたり善意に捉えたりせず、ダメなものはダメだと毅然と制する態度が必要」ということです。いつも怒鳴り散らしている人なんて、どんな事情があったとしても、やっぱりダメなものはダメなのです。
人を見るときには、過去の経歴、自分の常識、その他思い込みに引きずられるのは禁物だということを、あらためて感じた一件でした。
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