「アサーション」という言葉、ご存知でしょうか。すでに知っている方も多いと思います。直訳すると“主張・断言”などとなりますが、本来の意味として、“自他尊重の自己表現法”、“さわやかな自己表現”などといったり、“アサーション”とそのまま使われたりします。要は「自分の考え、感情、欲求などを率直に、その場の状況にあった適切な方法で述べる」「相手の立場を尊重しながら、適切な自己主張をする」ということです。
中身をものすごく要約すると、コミュニケーションのタイプには
1.言うべきことを言わずに我慢する非主張行動(ノンアサーティブ)
2.自分の都合で言い過ぎて相手を犠牲にする攻撃的行動(アグレッシブ)
3.相手を尊重しながらも、言うべきことをはっきり伝える主張行動(アサーティブ)
という三つがあって、1ではその場は丸く収まるが、我慢は蓄積していつか爆発する。2は一瞬気分がすっきりするが、後で様々なトラブルや後悔を招く。なので3の方法を取ることが望ましいというものです。
私がコミュニケーションスキル関連の研修を行う時は、最後のまとめとしてこのアサーションに関する部分をやります。実行するのはなかなか難しいことですが、知っているのと知らないのとは大違いなので、まず知ってもらうという目的で取り組みます。
ケーススタディをやったりしますが、最近この中で感じるのが、非主張行動(ノンアサーティブ)の傾向が強いという事です。どのようなコミュニケーションの取り方が望ましいかを考える課題にもかかわらず、「黙って従う」「自分の都合を変更する」「そのままやり過ごす」など、コミュニケーション自体を避けるような答えを出してくるケースが結構あります。
上司やご本人たちに、実際の仕事の場面での話を聞いてみても、「上司の指示通りにする」「反論しない」など、どうも自分の意見を言わないことが多いようです。よく、「今の若者はキレやすい」とか「自己中心で自分の都合ばかり」などと言われますが、仮に心の中はそうであっても、表面的に見えるのは圧倒的に非主張行動の方です。
思ったことを伝えようとしないということは、本人にとっては無理難題だったり、不安でいっぱいだったり、意見や考えが違ったりしていても、表面上は素直に理解したように見えるので、周囲からは気づきづらいはずです。
また、「とてもそんなこと言えない」「どうしても言いづらい」などの言い方をすることが多いと感じます。我々の感覚ではそれほどハードルは高くないはずなのに、彼らにとっては「言いづらい」「言えない」のです。たぶん相手との距離感をつかめないことが、一番の問題なのだと思います。
メンタルダウンを起こしたり、急に会社を辞めてしまったりということは、こんなところにも原因がある気がしてなりません。
幸いなことにコミュニケーションをうまくとりたい気持ちを持っている人は多く、どう接したら良いかがわからずに腰が引けている部分が強いので、研修などを通じて「言いたいこと」の「適切な言い方」がわかってくると、徐々に相手との距離感もつかめるようになり、比較的早く改善してきます。
私などは「コミュニケーションは心の通じ合い」と単純に思い、スキルは自然に身につけていったように思います。しかし今は自分たちの時代の常識にとらわれず、コミュニケーションスキルなどの方法論も、きちんと教えていかなければならないということだと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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