あるテレビ番組で、「人に注目されるとやる気が上がる」という話をしていました。
「ホーソン効果」と呼ばれるもので、アメリカのシカゴ郊外にウェスタン・エレクトリック社という企業のホーソン工場というところがあり、そこの労働者を対象に実験を行ったということに由来しています。人間の動機づけに関する古典的研究として、比較的有名なものです。
その実験結果とは、賃金、休憩時間、作業場の照明などといった客観的な勤務条件や職場環境にかかわらず、そこの労働者は、働きぶりを注目されることによって、やる気や責任感が引き出されてパフォーマンスが向上したというものです。
この実験中に、ある一つの工場で心理学者が観察していることを知らせたところ、その工場の労働者の意欲が上がったなどということがあるそうです。
働く人の士気をどう高めるかは、様々な方法が語られ、人事管理の上では重要な要素だと思いますが、なかなか簡単に解決できることではありません。
このホーソン効果も、実験が行われたのは1924年から1932年と、かなり昔のことで、研究結果の解釈には批判や異論も多く、いまだ評価は定まっていないとされます。ただ、今あらためて見直してみると、いろいろな示唆はあるのではないかと思います。
例えば、作業効率は、客観的な職場環境よりも、職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるということ、会社組織は、公式(フォーマル)組織と、非公式(インフォーマル)組織が重なって存在していて、それぞれがうまくかみ合っていないと生産性はあがっていかないことなどです。
この実験に対する評価は、賛否いろいろあるようですが、「人間関係論」が生まれるきっかけになったことであり、その後、組織においては、論理的な側面だけでなく、非論理的な側面である感情表現なども必要であると言われるようになりました。
昨今の企業の人事施策を考える上でも、社員同士の人間関係や感情面にも適切に対処することが必要になってきています。社員同士のコミュニケーションや良好な関係作りを促進する施策を取り入れる企業が増えています。
その方法は企業によって様々で、工夫のしがいもあるところです。
あらためて「人間は他の人間と関わってこそ人間なのだ」と思っているところです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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