本日付の日本経済新聞。
「今日本の若者に求められる力」と題して、講演の内容、パネルディスカッションの発言が大きく2面を使って紹介されています。
日本の子供・若者に、英語の基本的思考法クリティカルシンキングを指導することは、ほぼ不可能ではないかとあきらめ始めていた矢先だけに、「なるほど。。。大人がこれでは。。。」と納得してしまった掲載でした。
基調講演:LIXILグループ 人事総務担当者
「今後は活動の場を世界ととらえ、常にグローバルな視野と好奇心を持つグローバルマインドセットを持った人材が必要。 先を読んで方向性を示すことが出来るビジョン、変革力とイノベーション力。 そして、色々なバックグラウンドの人々が集まる中で自分の意見を発信できるコミュニケーション力が必要。」
何度読み返してもよくわかりません。
特に、グローバルマインドセットとは何でしょう?
Global mindset?
Merriam Webster Online Dictionary で調べてみました。
。。。そんな言葉はありません、て。
Global を調べてみました。
Involving the entire world - 世界全体を含む
Mindset は?
a person's attitude or set of opinions about something - 何かについて、普段から持っている信念から出てくる態度や意見
要するに「世界で起こっていることに好奇心を持ち、自分で意見を持て」、と。
かな?
なんで、私が解説をしているのかわからなくなったので、もう一言ご紹介。
「自ら組織をリードし、課題を発見・解決する能力。 正解のない課題への挑戦の出来る人材。」
なるほど、企業の採用担当者の言葉としては、これはもっとも。
しかし。。。
好奇心を持ち、世界のことを知り、正解のない課題を自分でみつけ、それを解決する能力を付ける?
日本の学校教育、そして社会のどこにそんな環境があるのでしょう。
子供達は、事実の暗記のみ、世界の情勢など関係ないこと。
入試に関係ないですからね。
ひとつしか正解のない、与えられた問題の答え方を受け身に学ぶのが日本の教育。
自分で問題解決能力などないので、とにかくグループに属することで安心を得ようとする社会環境。
生徒たちが挑戦中の連続英語コミックPixton。
1コマ目で、まず自分で「問題を創り出す」必要があります。
そして、それを3コマ内で解決。
ほとんどの生徒にはこれがとてつもない苦難です。
学校ではかなり優秀な生徒たちなのに。
社会人になったとたん、急に出来るようになるとはとても思えません。
で、大切な若者の教育を担う人たちはどう言っているか?!
基調講演:文部科学省 高等教育局長
「グローバル人材育成とは、日本人としてのアイデンティティーや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力、コミュニケーション能力などを身につけ、さまざまな分野で活躍出来る人材を育てることだ。 日本人留学生を6万人から10万人にすることが目標。」
。。。。。。
How?
もっともらしい抽象的な言葉はどうでもいいから、How(どうやって?)を実行するのが政府の役目では?
まったく具体的なHowは書かれていませんでした。
高等教育局の人がこれでは望みはゼロに近いですね。
仕方がないので、パネルディスカッション 「グローバル人材を育成するためには」のサマリーを読むことに。
_____
杏林大学は、「卓抜した語学力とスマートでタフな交渉能力を備えた人材」を育てるんだそうです。 Howは「中国語サロン、英語サロン」などを用意して。。。
「なんとか英語サロン」で卓越した語学力がつくのなら、日本人はとっくの昔に世界での英語達人になっているのでは?
法政大学は、「世界のどこでも生き抜く力を備えたフロントランナー」を育てるとか。 How は示されていません。
堪り兼ねた司会者が、「英語力を身につければグローバル人材になれるわけではないと思いますが。。。 では、グローバル人材の定義とは?」
ぱちぱちぱち。
よく聞いてくれました!
杏林大学―「自分の国を知るために一度海外に出て再び戻ってくる人材」
。。。は?
芝浦工大―「自分の考えをわかりやすく相手に伝え、相手の考えを尊重出来る能力」
自国でも世界でもこの能力はもちろん必要です。
でも、グローバルとどう関係が?
というより、母国語でも自分の考えを論理的・客観的・科学的・批判的に組み立てる訓練を受けたことのない若者に、どうやって教えるのでしょうね。
How は書かれていません。
東京農大―「課題を世界の中でもとらえる。」
How なし。
明治大学―「専門領域において主体的に学び、自ら新しい価値を創造できる。」
How なし。
「主体的に学ぶ」「新しい価値」の定義もなし。
___________
次第に支離滅裂さが増して来た、パネルディスカッション。
英語をそのままカタカナにした言葉を連ねた発言になりました。
「フォロワーシップ、エシカル、サスティナブル、フレキシブル、ダイナミック、オープンモチベーション、ダイバーシティ」
元の英語の意味からはかけ離れた意味で使っている様子ですが、ちょっとだけ文句を言うと。
まず、日本の子供、若者の考え方はFlexible からはほど遠いです。
学校・社会環境がカチカチですから。
ダイナミック? 日本社会が?
Dynamic: always active or changing
ダイバーシティ?
人口の99%が日本人の国ですよ。
Diversity: the quality or state of having many different forms, types, ideas, etc.
: the state of having people who are different races or who have different cultures in a group or organization
(様々な多くの異る考えや、人種、文化、グループが存在する状況、またその質。)
司会者のまとめ: 社会に期待することへのキーワードが並びました。
(素晴らしい教育が期待出来そうですね。。。)
_____________
Pixton でもやればどうでしょうね。 日本の大学で。
世界の主流の論理を訓練出来るかも。
いやぁ、潜在能力のある日本の若者は、この国の大人を見捨てて出て行くのが賢明かもと、改めて感じた記事でした。
カナダで待ってますよ~。
Come Join Us.
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カナダの小・中・高校の教育課程を基にした指導をしています。
クリティカルシンキングの基本が出来た生徒は「カナダの小さな町での留学・ボランティア」で自分本来の能力を発揮中です。
Super World Club(大澤眞知子、Robert McMillan)
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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