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大澤 眞知子
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閲覧数順 2024年04月26日更新

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日本の中学受験狂乱と英語イマージョンの大罪

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迷子になった日本の教育

「私立中学受験狂乱」というコラムを2012年に書きました。

そして2024年、狂乱どころかSceince Fictionのような受験世界が(幼稚園から大学まで?)が日本中を覆っているようです。


2012年に書いたコラムのサマリーです(全文はこちら

「子供の成長にとり好ましくないことはわかっていても、周りの親たち、塾からの攻勢、世相に躍らせて心穏やかではない。」というご質問に答えてのコラムでした。 

発達・脳心理学から、最新の科学的証拠からも、小学生を中学受験に駆り立てることは脳の正常な発達を阻害する可能性が高いです。

子供の脳は6歳から12歳の間に非常に重要な発達をします。

The executive functionと呼ばれる、脳の一番高等な部分が大きく発達して来ます。ちょうどおでこと目の裏側くらいにある the prefrontal cortexという部位です。そこは脳の他の部分を統制し、「自分の目的にそくした行動」が出来る能力を発達させます。 

その能力は、まず目に見える形として、学業成績に現れてきます。特にCritical Thinking という論理的・科学的に物事を考え、結論に近づく能力が学習結果に現れて来ます。そして、その能力はその後ずっと一生を通じ、子供の人生の成功にとてつもなく大きな役割を果たして行く能力です。(Brocki & Bohlin, 2004)

具体的にThe Executive Functionはどんな能力かというと:

1. 関係あること、関係ないことを区別し、いらないことへの注意を禁止する能力
2. 効果的に物事を進める計画を立てる能力
3. ひとつのことへの集中力と、それを持続して行う能力
4. 一面的な見方にとらわれず、柔軟な考え方を組み立てる能力
5. 実際に行動を行う場合にも、状況により柔軟に方向を変える能力

人間の脳には、このような能力が6歳~12歳の間に育つよう遺伝子が組み込まれています。
ただし、自然な脳の発達を阻害さえしなければ、です。

「自由な時間がたっぷりあり、その中で多くのことを自分から経験していくこと」が鍵です。 

6歳から12歳の脳に必要な経験とは。

何が重要で何が重要でないか、自分にはどのような思考過程が合っているのか、自分はどう学習するのが面白いのか、その面白さを集中して追及するにはどうすればいいのかを、自分で考え、発見する時間がたっぷりあることです。 

そんな過程を脳がどんどん学習し、動機付けも集中力も自分の脳の命令でできるようになります。

発達心理学では、それを Self-generation of drive と呼びます。

自分から作り出す動機です。親や、塾には作れない動機です。

そのような学習をしているうちに、脳はもうひとつの素晴らしい能力を広げていきます。

Working Memory という短期メモリーを収納する部分の発達です。

Working Memoryも6歳を過ぎるころから急激に発達し、The Executive Functionには欠かせない相棒となっていきます。

塾で指示されるまま丸暗記し、公式を覚え定型の回答方法を覚える子供時代を送った脳は、このような能力の発達を止めてしまいます。


子供の脳の発達には、その年齢に一番適した環境が必要です。

大人が考え、金儲けのための私立中学を作り、それに便乗した塾ビジネスを繁栄させるために、子供の脳の発達を阻害する権利は誰にもありません。

Reference:

Brocki, K. C. & Bohlin, G. (2004) Executive Functions in Children Aged 6 to 13: A Dimensional and Developmental Study. Developmental Neuropsychology. 20(2), 571-593」


サマリーも結構長いですが、それほどここで述べていることは重要と考えています。

このコラムを書いてから12年。受験狂乱は収まるどころか、完全な金儲けビジネスとして活況を呈している日本の崩壊ぶりに寒気がします。


受験生の子供より親が目を血走らせて「この中学!」「いやあの中学!」と発狂してますね。

しかも、一歩引いて見ると笑える光景に出会えます。


いわゆる、昔からある名門校に行く子供たちは残念ながら生まれながらの知的能力が高いのは否定しようもありません。

元の脳レベルが高くない場合は、いくら塾に何百万も払ってもそんなレベルには到底到達出来ないのは親たちも知っているはず。

そこで、知能は高くないけど、特別な教育ぅ〜〜〜と走り回る親をガチッと捕まえたらしいのがいわゆる「小学校での英語イマージョン教育」「英語に特化したカリキュラム」「カナダとのダブルディプロマ」「日本にボコボコ存在する似非インターナショナルスクール」。


脳の専門家でも、2言語で教育をする専門家でもない外国人を連れて来て、教材を英語にしただけの大笑いのカリキュラムに放り込まれた子供たち。

高校以降での高度な教育のための基本である学習なしで、ただ単に英語で理科や社会をなぞるだけ。

子供の脳には単なる英語の断片しか入らず、それもあっという間に消えて行き、残るのは空っぽの脳だけ。


名門中学のやっている事の是非はおいといて(違う意味で子供が壊れてますが)、結局もとの能力の高い子達の英語能力は高校時代にはかなり高くなります。

考え方は日本のまま、Critical Thinkingもないですが、正しく文法を使え、難しいReadingを理解出来る能力は大したものです。


名門には行けず、「英語〜〜〜!」に親が押し込んだ子の英語力は、どんなに逆立ちしてももともとの能力の高い子には届きません。

なのに。

なぜ、それに輪をかけて基本能力すら壊してしまう「中学受験で英語イマージョン!」などに走るのでしょうか。

科学を学んだ私からは、どうしても意味不明です。


生来の知的能力が高くない子供には、それぞれの特性を見つけ(ほとんどが実用的なスキルにむすびつくはず)それを伸ばす教育こそが社会にも、そして本人が幸せな人生を送るためにも必要なはずなのに。

なぜ、脳を破壊し尽くすまで親が受験狂乱に走りますかねぇ。


最近、そんな犠牲になった子どもたちに出会うことが多くなりました。

幼児ですね、ほとんど。

日本語の言葉も拙い、英語?まともな文が作れません、年齢相応の成長が出来ていない、見ているだけでこの子達の将来はどうなるんだろうと考え込みます。

母国語さえ満足にOutput出来ない、悲惨なSemilingualがうごめく日本の未来が見えるようです。


Semilingual:2つの言語への知識はあるがどちらも中途半端で満足に使えないこと。

Semilingualについての2022年のリサーチから:セミリンガルは普通は相当複雑な環境から生まれます。典型的なのは移民、親の教育レベルの低さ、そして貧困です。そのような子どもたちは良質な教育への機会が制限され、異なる文化でのストレスが蓄積し、教師たちの能力不足など、言語力へのマイナスな影響が多くなります。


移民したわけでもなく、貧困でもない日本の子供の親がなぜSemilingualが約束されている妙な「英語教育特化・イマージョン・インターナショナルスクール」に走るんでしょうか。

謎でしかありません。


間違ってしまいましたか?

OK


このコラムは一般公開です。

この狂乱がひどすぎて、主役のはずの子どもたちが犠牲になっていくのを見ていられないのが理由です。

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カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。

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