遺言書を作成するなら公正証書が安心、確実

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公開日時
2012/09/30 00:39

通常、遺言書を作成する場合、遺言者が自分ですべて手書きで作成する自筆の遺言書(遺言自筆証書)と公証人役場で公証人に作成してもらう遺言書(遺言公正証書)があります。

遺言書の作成は、法律上の形式を備えている必要があります。この法律上の形式を備えていない遺言書は、場合によって無効とされ各種相続手続で使用できない場合があります。

遺言書の意思が反映されるようにするには、作成された遺言書が相続開始後、使用できなければ意味がありません。

そこで、遺言書を作成する場合は、自筆による遺言書よりも、公証人役場で作成する遺言書の方が安心、確実です。

公正証書で遺言書を作成したいときは、日本全国にある公証人役場という国の認定している所に行って、公証人に作成してもらいます。
 
公正証書で遺言書を作成する場合には、立ち会う証人2人が必要です。
立ち会う証人2人は、推定相続人以外の人がなります。証人は公証人役場でも紹介してくれます。
 
公証人は、作成した遺言公正証書に公証人としての認証文をつけます。
依頼者は、公証人に作成してもらった遺言公正証書の正本を保管します。
この正本を紛失しても、作成してもらった公証人役場にデータが保存されていますので、再発行が可能です。
 
相続が開始したときには、この遺言公正証書で不動産をはじめ各種の相続手続をすることができます。
 
遺言公正証書の最大のメリットは、自筆の遺言書と異なり、家庭裁判所の検認手続を経ることなく、相続手続をすることができることです。
 
自筆の遺言書の場合は、家庭裁判所に検認の手続を申立てをします。
申立の際、被相続人の除籍謄本や法定相続人の戸籍謄本などの書類を提出します。
家庭裁判所の検認手続では、法定相続人全員に通知され、法定相続人全員が家庭裁判所に呼び出されます。ただし、申立人は立ち会う必要がありますが、その他の法定相続人は必ずしも立ち会う必要はありません。

公正証書で遺言書を作成する場合、専門家(司法書士・弁護士・行政書士など)に依頼する必要があるでしょうか?

上記のように、公正証書で遺言書を作成するときは、公証人役場という所で、公証人の認証したものが作成されます。
公証人は、元裁判官、元検事、元弁護士や元司法書士です。したがいまして、公証人は、法律のプロ中のプロです。
 
公正証書の遺言書を作成したいというとき、最終的には、公証人役場に出向かなければなりません。
もっとも、公証人が出張してくれることはありますが、出張費を支払わなければなりません。
 
したがいまして、専門家(司法書士や弁護士など)に依頼した場合であっても、最終的には、遺言者ご本人が公証人と面談しなければなりません。

専門家(司法書士や弁護士など)に依頼する場合は、公証人役場に提出する戸籍の証明書などを集めてくれたり、遺言書の内容である原案を作成してくれます。
 
専門家(司法書士や弁護士など)に依頼する費用は、戸籍の証明書の取得費や原案作成料です。
専門家(司法書士や弁護士など)に支払うこれら費用は、専門家により異なります。
5万円から、場合によっては、財産の金額や相続するする人の人数によっては、10万円以上かかる場合もあります。
 
さらに、相続が開始した後の遺言書の執行も依頼する場合は、遺言執行者としての手数料を相続人が支払わなければなりません。
この遺言執行者も専門家に依頼する場合は、遺言を執行する財産の金額の何パーセント、という場合もあります。
例えば、財産が1000万円で遺言執行者に支払う手数料が3パーセントであれば、30万円を相続人が支払うことになります。

上記のように、公証人は、元裁判官、元検事、元弁護士や元司法書士で、法律のプロ中のプロです。
必要書類についても教えてくれますし、遺言書の原案も、もちろん、遺言者ご本人と一緒に考えてくれます。当然、親切に、丁寧に、わかりやすく、お話ししてくれます。
 
そこで、このように、親切に、丁寧に、わかりやすく、お話ししてくれる公証人ですから、基本的に、普通の方は、専門家に相談や依頼をする必要はなく、公証人役場に直接、出向いて、公証人と打ち合わせをするのが、もっとも適切なやり方といえます。
 
遺言書に遺言執行者を記載する場合もありますが、この場合も、実際、相続する相続人の一人を遺言執行者にすることができます。そうすれば、専門家を遺言執行者にする必要はなく、相続人の負担する費用も軽くなります。

上記のように、基本的には、普通の方は、専門家に依頼することなく、公証人役場に直接、遺言書の作成を依頼した方がよいでしょう。
ですが、次の方のような場合は、専門家に依頼した方がよいでしょう。

1.遺言者ご本人が、身体の不自由により公証人役場に出向くことができない場合
 この場合は、公証人役場に提出する戸籍の証明書の取得や遺言書の原作成案を専門家に依頼します。

2.財産がたくさんあり、相続人も2人以上いる場合で、相続税がかかる場合
 この場合は、全財産の相続があったときの相続税を計算する必要があります。
 公証人は、法律のプロとはいっても、相続税のことは正確にはわからないからです。
 相続税がかかるような場合は、事前に、税理士と相談する必要があります。
 相続税の計算をしないで、遺言書を作成した場合、相続開始時に、相続人が多額の相続税を納めなくてはならなくなる場合があるからです。
 また、相続開始時に遺言書があったとしても、多額の相続税がかかるなどの理由で、遺言を実行しないで、相続人の間で、遺産分割に切り替え、せっかく、遺言書を作成しても無駄となる場合があるからです。

3.相続が開始した場合、相続人間の争いが予想される場合
 この場合には、遺言執行者の指定を含め、信頼できそうな専門家に依頼した方がよいでしょう。

4.相続が開始した場合、相続人に遺言を執行させるには、心もとない場合
 この場合も、信頼できそうな専門家に依頼した方がよいでしょう。

5.立ち会う証人2名を専門家に依頼したい場合
 この場合も、もし、身近に、証人となる人がいない場合であっても、公証人役場で用意してくれます。ただし、証人2名に数万円の手数料を支払う必要があります。

以上、公正証書で遺言書を作成することにより、相続開始後の相続人間の争いごとを未然に防ぐという意味でも、遺言書の作成をお勧めします。

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このコラムの執筆専門家

芦川 京之助(司法書士)

横浜リーガルハート司法書士事務所 司法書士

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芦川 京之助
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