
- 大黒たかのり
- 大手町会計事務所 代表税理士
- 東京都
- 税理士
-
03-3518-9945
対象:会社設立
- 市山 智
- (司法書士)
起業しようという場合、会社法の制定により資本金が1円でも設立することができるようになったこともあり、
「株式会社」を設立するのが一般的ですが、
小規模な事業をおこなう場合には、株式会社ではなく、
「有限責任事業組合」を設立するケースも多く目にするようになりました。
この「有限責任事業組合」は、イギリスのLLP(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)という制度を参考に、
平成17年に「有限責任事業組合契約に関する法律」が制定されたことにより、
日本でも運用が開始された事業形態のひとつです。(以下、「LLP」といいます。)
LLPは、株式会社と異なり、会社形態ではなく、民法上の「組合契約」を基礎とするものです。
そのため、設立に関しては、株式会社よりも手続きが少なく、また、設立の費用も低く抑えることができます。
また、株式会社のように取締役を置いたり、株主総会を開催したりする必要もありません。
さらに、名称の通り、組合員は「有限責任」ですので、
株式会社の株主と同様に、自己の出資額を超える損失を負担することはありません。
(但し、組合契約であるため、出資者は、経営に携わる必要があり、
株式会社のように、経営に関与せず、出資だけをして配当を受け取ることはできません。)
また、株式会社の場合には、会社の利益に対して法人税が課税され、
出資者が利益の配当を受ける際に再度所得税が課税される二重課税が生じてしまいますが、
組合契約の場合には、会社ではないため、組合に対して法人税はかかりません。
組合事業から生じる所得は、各組合員の所得として課税されます。
組合員が個人である場合には、その個人に対して、直接所得税が課税されます。
この二重課税されない課税の仕組み これをパススルー課税といいます。
LLP設立の初期や事業不振の場合には、組合事業が赤字になることも考えられますが、
このパススルー課税の場合には、組合事業の赤字の金額を、
各組合員の他の所得(給与所得など)と通算することができます。
株式会社を設立した場合には、なし得ない処理であり、これは税コスト面からは大きな魅力です。
但し、前述のとおり、LLPの組合員は、自己の出資額までしか損失の責任を負わない「有限責任」であるため、
自己の出資額を超える損失については、他の所得との通算ができないこととされています。
LLPには、株式会社にはない魅力がたくさんありますが、ひとつ難点がります。
それは、LLPから株式会社への組織変更が認められないことです。
この場合には、一度LLPを解散して、改めて株式会社を設立する必要があるため、
手続きも煩雑であり、株式会社の設立費用も発生してしまいます。
起業時、事業形態を選択するときは、目先のメリットだけでなく、将来の人的・物的コストも考慮に入れる必要があります。
このコラムの執筆専門家

- 大黒たかのり
- (東京都 / 税理士)
- 大手町会計事務所 代表税理士
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