今回は、健康保険の給付申請の中で最も返戻(へんれい)率の高い「療養費」についてお話しします。
旅先で急病にかかり、あるいはケガをして、近くに保険医療機関がなくてやむなく保険の使えない病院で診療を受けたときなど、医療費の全額を立て替え払いした場合は、後日健康保険に申請すると、健康保険の給付に見合った金額を払い戻してもらえます。
これを「療養費」といいます。
ただし、払い戻される金額は、健康保険を使って同じ診療を受けた場合に適用される保険点数を基準に計算されます。
実際に支払った額から一部負担金(年齢や所得により、3割~1割)を差し引いた額と同じにはならない点を、あらかじめご承知おきください。
「療養費支給申請書」には医療機関で発行された診療明細書を添付しますが、これは必ず傷病名の記載されたものにしてください。
また、診療に要した費用の領収明細書は、必ず原本を添付します。
海外で診療を受けた費用を払い戻してもらう「海外療養費」は、渡航中の不慮の事故で診療を受けたときに申請できるものです。
治療を目的に渡航した場合には給付は受けられませんのでご注意ください。
海外で発行された「診療内容明細書」と「領収明細書」が外国語で書かれている場合は、翻訳文(翻訳者が署名し、住所と電話番号を明記)を添付します。
払い戻される金額は、日本で保険診療を受けた場合の保険点数を基準に計算されます。
次に、国保加入者だった人が就職し、保険証が交付される前に国保で受診したときのお話をします。
保険証が発行されて年金事務所から「資格取得確認及び標準報酬決定通知書」 が届いて国保の資格喪失手続きをすると、やがて国保から給付の返還を求められます。
その返還した費用も、「療養費」として申請できます。
その場合は、国保に返還した際の領収書と診療明細書を添付します。
「療養費」の支給対象となるのは、これらのほか、
・医師の指示により治療用装具(コルセット、ギプス、義肢など)を購入、装着したとき
・9歳未満の子が小児弱視等の治療でメガネやコンタクトレンズを購入したとき
・生血液の輸血を受けたとき
などがあります。
「療養費支給申請書」は、協会けんぽのHPからダウンロードできます。
記入例と注意事項をよく読み、わからないことは協会けんぽの窓口で聞きながら記入するようにして、返戻されないように申請しましょう。
※ここでは、「協会けんぽ」での取り扱いについてご説明しました。健康保険組合に加入されている方は、加入する健康保険組合のHPをご覧になり、わからない点は健康保険組合にお問い合わせください。
このコラムの執筆専門家

- 服部 明美
- (埼玉県 / 社会保険労務士)
- 社労士はっとりコンサルティングオフィス 社会保険労務士
お客様の「こころ」に寄り添う社労士でありたい
職場のメンタルヘルスと年金関連を得意分野としております。就業規則の作成や見直し、休職・復職規程、衛生委員会の運営指導、社会保険制度説明会等、原稿の執筆や講演、社員研修の講師依頼など、お気軽にお申し付けください。
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