先日見ていたテレビ番組で「日本人は一見ムダと思える時間や労力、手間をかけることに、価値を見出す性質がある」と言う話がされていました。過程を重んじる茶道などを代表に、お金を払っているのに自分で調理する鍋やお好み焼き、わざわざ遠くまで出かけて自分で収穫する果物狩りなど、目的に至る過程(プロセス)で、楽しさを手に入れるというところがあるのだそうです。
確かに日本人は、過程を表す“○○道”という言い方を良くしますし、お好み焼きも果物狩りも、単にそれを食べる目的、手に入れる目的と考えると、どちらも効率的ではないですよね。でも何か楽しいと感じるところは、間違いなくあると思います。
私は人事評価や人材育成などで、「結果だけでなくプロセスに目を向けることも大切で、両方のバランスが重要」と常々感じていて、その考えに沿った制度づくりもしていますから、自分のツボにハマったせいもあり、なるほどそうだ!と強く思ってしまいました。日本の企業に結果中心で評価する“成果主義”がなかなか根付かないのも、このあたりの国民性に一因があるのかもしれません。
ただそうは言っても、グローバルな環境でお仕事をされる方もたくさんいらっしゃる昨今、日本人の心情を取り上げてくれる企業ばかりではありません。ビジネスの世界では、やっぱり結果を中心に問われます。
そんな中で、私自身が意識したり、他の方にアドバイスしているのは、「目標達成までをできるだけ細かい目標にブレイクダウンして、それ自体をプロセス化してしまう」ということです。
例えば営業目標の数字があったとすれば、「何か月で何件の受注が必要」などと言う計算はすぐにできるでしょうし、これをさらに細かくブレイクダウンしていくと、「今日は一日で何件電話しよう」とか、「今日は一日で何軒訪問しよう」とか、プロセスといっても良いところまで目標を落とし込めるはずです。大きな目標を意識しながらのToDoリストと言っても良いのかもしれません。
そうすると、それこそ一日単位で目標が達成できたかできなかったかはすぐわかるし、できたならば達成感があり、できなかったならば翌日取り返すことを意識する、なんてことができます。行動に対して常に結果が返ってくる状態になり、モチベーション理論でいう「行動と結果の随伴性がある」という状態ですから、その人のやる気にもつながります。ノルマ感も少なくなるので、意外にお勧めです。
私は本音では成果主義は好きではありません。会社という同じチームなのに、他責になって攻撃し合ったり、助け合わなくなったり、目先のことしか考えなくなったり、お互いが足を引っ張り合ったりという、良くない部分を見てきたからです。それでも「しょせん結果がすべてだよね」などと言われると、強く反論はできません。ある面では真実であるからです。
結果とプロセス、それぞれに対する考え方は、会社の風土によって様々でしょうが、自分自身の中で結果とプロセスのバランスをうまく取っていくことは、意識次第でできるのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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