(続き)・・それでは、そのように企業に於いてメンタルヘルス上の問題が多発している原因としては、いったいどのようなものがあるのでしょうか。メンタル不調を招く原因には様々なものがあります。個人的な問題としては、食生活の乱れに伴う栄養バランスの破綻や低体温などがあり、環境面では家庭やオフィスの環境の悪化が挙げられます。また職場に於いては、残業や長時間労働に伴う心身の疲弊や睡眠障害、ストレスの増大などが問題視されています。
そうした中で、職場に於ける「コミュニケーション」上の問題が、近年とみにクローズアップされています。上司と部下、同僚同士、経営者などトップと一般社員、また顧客や取引先との関係など、およそ社内外の人間関係の齟齬がストレス源となり、メンタルヘルス不調の主要な原因の一つとなっています。実際に多くの経営者や人事の方々から話を聞くと、社内のコミュニケーション上の問題がメンタル不調者の増加した最大の要因ではないか、という印象をもっている方が目立ちます。
確かに職場というのは、少なくとも正社員にとっては一日の半分くらいの時間を過ごす空間です。特に幹部社員や出世意欲の強い社員、納期の迫っている仕事を手掛けている社員などの場合は仕事量が特に多く、結果的に家庭よりも職場に居る時間の方が長いというケースも少なくありません。そのように長い時間を過ごしている職場に於いては、共同で何らかの仕事や作業をしているスタッフ、つまり上司や部下、同僚などとの間で有効なコミュニケーションを取ることが欠かせません。
そうでなくとも人間は互いにコミュニケーションを交わすことで生き延び、発展してきた動物です。人間は古来より言葉や文字、手紙を発明し、さらに近代以降は電話やメールなども登場して盛んにコミュニケーションを交わして文明を発達させてきました。実際に何らかの原因で言葉が話せなくなるか、あるいは他人の言葉を聞き取れなくなった人はコミュニケーションの齟齬を来たし、生活や仕事に支障を招くばかりか、往々にして肉体的、精神的に不安定になることがあります。
とりわけ現代の職場に於いて、コミュニケーションは決定的に重要な意味をもちます。グローバルな競争や共同事業が盛んになり、またIT技術を駆使して情報が活発に行き交う企業現場では、迅速かつ有効な情報交換が欠かせません。そのためいわゆる「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」の重要性が各方面で認識され、その充実を図るための書籍やセミナー、スクールなどが活発になっています。今や企業のトップを含め、情報交換やコミュニケーションの重要性を否定する人は殆んどいません。
実際に、社員間や対外的なコミュニケーションが阻害されると、社内でギスギスした雰囲気を招き、社員同士で不信感や足を引っ張り合うなどの風潮が生まれます。その結果、社員や組織のパフォーマンスは大きく損なわれ、ひいては売上げや収益、事業の進展に重大な支障を来たします。また企業イメージが悪くなり、将来的な展望を描けなくなります。そのように社内のコミュニケーションは企業戦略にとって重要な意味を持っていますが、何故それに苦労する企業が増えているのでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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