毎年夏になると「熱中症」による死亡事故の報道がニュースで流れ、しかもその数が年々増加傾向にあるようです。熱中症による死亡者数の統計をみると、1993年までは年間20~150人の範囲で推移していたのが、歴史的な猛暑だった1994年に589人と急増し、それ以降は年間150~400人以上という、たいへんな数に上っています。
熱中症とは、高温環境やスポーツ活動、入浴などによる強い温熱ストレスが体にかかった際に、発汗などの体温調節機能が追いつかず、脱水、ミネラル欠乏、高体温となり、体に様々な悪影響が生じる一連の機能障害を指しています。これが進むと体温調節機能自体が破綻し、最悪の場合には死亡に至ります。
熱中症には軽症から重症までの各段階があります。まず比較的軽症なのは「熱失神」で、暑熱環境に急激にさらされた際に末梢血管が急に拡張して血圧が低下し、脳血流が減少して顔面蒼白、めまいなどの症状を起こします。この場合はすぐに涼しいところで横になり、体を冷やし、水分を充分に補給すれば短時間で回復します。
次に熱い環境で多量に発汗し、水だけを補給した場合には血液の塩分濃度が低下し、上肢や下肢などの筋肉にけいれんが発生する「熱けいれん」に見舞われます。この場合は真水よりも、塩分やミネラルを適度に含んだアイソトニック飲料などの摂取が必要です。また予防のためには、ミネラルの豊富なバナナや塩分に富む梅干しなどの摂取が有効です。
さらに多量の発汗によって、体重比2%以上の脱水やミネラルの喪失が進行すると、次の「熱疲労」に至ります。この段階ではひどい疲労感や虚脱感、、めまい、吐き気や頭痛、血圧低下などのショック症状がみられます。こうなると体を単純に冷やしただけでは回復しないこともあり、また重症化する恐れもあるため、医療機関への受診が必要になります。
この状態を放置した場合には最重症の「熱射病」に至ります。ここでは上記に加えて、意識障害や全身のけいれん、麻痺などの神経症状が現れます。同時に体温調節機能自体が破綻して体温が40℃以上になる一方で汗をかきません。また細胞や臓器の機能障害を招き、血液の凝固や多臓器不全となって死亡の危険が増大します。この状態では、直ちに医療機関に搬送しなければなりません・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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