「働かないアリ」は組織存続に必要という話から - 組織戦略・組織作り - 専門家プロファイル

ユニティ・サポート 代表
東京都
経営コンサルタント
03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:人事労務・組織

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

「働かないアリ」は組織存続に必要という話から

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 人事労務・組織
  3. 組織戦略・組織作り
社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 ご存じの人も多いかもしれませんが、働きアリに関する研究で、グループの中には必ず働かないアリが一定割合で存在していて、それらを排除しておグループを作っても、同じように一定割合の働かないアリが出現するという話があります。

 

 この理由は長く解明されていなかったそうですが、最近の研究結果によれば、アリの1匹ずつを個体識別した上で、1カ月以上に渡って8つのコロニーの行動を観察した結果、最初よく働いていたアリが休むようになると、それまで働かなかったアリが動き始めることを確認したとのことです。

 勤勉なアリだけのコロニーでは、アリが一斉に疲労で動けなくなるので、コロニーが滅びるのが早く、働かないアリがいる方がコロニーが長続きする傾向があったそうです。

 

 コロニーの中に必ず2~3割いる働かないアリは、他のアリが疲れて動けなくなったときに代わりに仕事をして、集団の長期存続に不可欠なことがわかったそうです。

 この研究を主導した教授は、「人間の組織でも、短期的な効率や成果ばかりを求めると悪影響が出ることがあり、組織を長期的な視点で運営することの重要性を示唆する結果ではないか」と語っていました。

 

 少し前のことですが、これとまったく同じ話をしていた知り合いの社長がいます。

 どう見ても暇そうな社員が何人かいたので、その社長に「そういう人を組織内に放置すると、他のメンバーがやる気を失う恐れがあるから、もう少しきちんと仕事を与えて働かせた方が良い」という話をしました。

 その時に言われたのが、「もしも何か急に対処が必要なことが起こったとき、多少の余力がなければそれに対応できなくなるので、多少はそういう人員を抱えておくことも必要だ」ということでした。

 

 その当時は、今一つ納得できない言葉でしたが、その後私もいろいろな会社とかかわってきた今は、一定の余力が必要ということに当てはまるケースは意外と多く、当時の話が理解できるようになりました。

 

 実際に余力を持てる会社というのはそれほど多い訳でなく、多くの場合はギリギリの人数と限られた設備や時間の中で仕事をしています。目の前の収益を上げるためには、仕方がない部分でしょう。

 ただ、そんな中で、誰か一人が欠けたり、機械やその他設備が壊れたり、急な納期短縮というような事態が起こったりすると、今いる人だけで、力技の人海戦術に頼るしかなくなってしまいます。

 そういう状況での仕事は、どうしても雑になり、品質低下による手戻りが増えたり、さらに誰かが体調を崩したり、どんどん悪循環に陥って本当に会社存続の危機となったりします。

 

 しかし、偶然も含めてそれなりの余力が会社にあった場合、ここまでひどい状況に至ることはありません。

 ある会社であったことで、社内的に大きなプロジェクトの一つが炎上し、かなりピンチと思われる状況でしたが、たまたまそのタイミングで、会社の海外留学に参加していた社員が復職してきたため、プロジェクトはどうにか持ち直したということがありました。

 さらに、復職してきた社員はしばらく仕事をしていなかったため、心と体のリフレッシュが万全だったせいか、結構な無理をサラッとこなしたらしく、この人が個人的に持っていた余力も、良い方向に作用したようでした。

 

 「組織の存続のためには、多少の非効率も必要である」ということは、頭ではわかっていても実行するのはなかなか難しいことです。そもそもどの程度の余力が適切かがわかりづらいですし、やっぱり暇な誰かが周りにいるのは心情的に許せません。

 

 それでも、「みんなが勤勉では、一斉に疲れて動けなくなってしまう」とか、「働いていた者が休み始めると、働かなかった者が動き始める」というのは、私の経験上でも感じることで、組織の存続のためには考慮しておくべきことです。

 

 アリにできることなら、人間にもできると思ってしまいますが、そうはいかないものなのでしょうか。

 

 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 経営コンサルタント)
ユニティ・サポート 代表

組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。

03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

カテゴリ 「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム

カテゴリ このコラムに関連するサービス

対面相談 【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断

中小法人限定で当事者には気づきづらい組織課題を社員ヒアリングで診断。自社の組織改善に活かして下さい。

料金
無料

組織の課題は、当事者しかわからない事とともに、当事者であるために気づきづらい事があります。これまでの組織コンサルティングで、様々な組織課題とその改善プロセスにかかわった経験から、貴社社員へのヒアリング調査によって組織課題を明らかにし、その原因分析や対策をアドバイスします。予算がない、依頼先を見つけられないなど、社外への依頼が難しい中小法人限定です。社員ヒアリングのみで行う簡易診断になります。

【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断

このコラムに類似したコラム

問題は「閉鎖的な組織環境」でエスカレートする 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/10/11 22:08)

「自力でできること」と「どうしようもないこと」の区別 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/08/17 08:32)

「オッサンの定義」なるものを見て気づいたこと 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/06/14 22:06)

「満足」ばかり求めると「不満」だけが残る 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2022/03/10 07:00)

始めるタイミングの善し悪し 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2021/08/03 07:00)