これは業界によっていろいろだと思いますが、自社のライバルをはっきりと見定めている会社とそうでない会社があります。
私がかつて属していたIT業界では、あるレベルまで達した中堅企業や大手企業の場合は、それなりにライバル企業を見据えているところもありますが、企業数では中小零細の業者が圧倒的に多いということもあり、あまりライバルとか競合ということを考えていない傾向があるように思います。
そのせいもあって、私自身の意識としても、誰がライバルとか、どこと競合しているということをあまり考えないところがあります。
これはスポーツ選手などでもそうですが、最近の傾向として、誰かをライバルと位置付けるような他人との比較はせず、あくまで自分自身で定めた目標に対する取り組みをすることで、自分を高めていこうという人が増えています。
私自身も、他人の事情に左右されたり、「勝った」「負けた」と他人との比較で一喜一憂したりするよりは、他人に左右されない自分自身の目標への取り組みを積み重ねていく方が望ましいと思っています。
ただ、私のクライアントの会社にが、はっきりとしたライバル会社がいて、常にその会社を上回ることを目標にしているところがあります。
この会社の様子を見ていると、まず自社の目標やサービスを考える際に、必ずライバル会社の動向をチェックします。勝負できるところと難しいところを切り分け、それに見合った戦略を練ります。
また、実際の営業活動でバッティングすることも多いので、価格設定やサービス内容などもライバル会社の動向を見ながら対策を考えます。ライバル会社と直接接する訳ではありませんが、当然さまざまな駆け引きがあります。かといって、相手との比較で一喜一憂していることはほとんどありません。
こういう環境で仕事をしている人はたくさんいるでしょうが、ライバルを意識していない人たちと、ライバルがはっきりしている人たちとを比べて思うのは、ライバルがいた方が自分たちの目標がはっきりしやすく、答えをあいまいにせずに常に何らかの行動が求められ、なおかつそれが習慣づいているということです。
自分だけで立てた目標というのは、その取り組みも含めて概して甘くなりがちで、それなりの意志の強さがないと、なかなか達成できないことも多いですが、その一方、競わなければならない相手が、明確なライバルとしてはっきりしていると、それぞれの社員はやらざるを得ない状況に置かれ、目標への取り組みが実行されやすい面があります。個々の意志の強さに関わらず、実行力が上がるように思います。
目標に対する自律的な取り組みができればそれが最善ですが、人間というのは、ついどこかで甘えたりサボったりしてしまうものです。
組織運営において、もしも実行力に不足を感じるような場合は、あえてライバルを明確化するという方法もあるように思います。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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