食品偽装、粉飾決算、日雇い派遣など、企業モラルを問われる事象が続いています。
企業経営は経済活動ですから、基本的には経済原則が最も優先順位の高い判断基準になります。経済原則とは極論すれば「収益にプラスかマイナスか」で、特に経営者は会社の全責任を負い、プレッシャーにさらされながら事業を継続して、利益をあげ続けなければなりません。ですからどうしても経済優先の判断に傾きがちです。この行き過ぎが企業不祥事につながっているように思います。(中には私利私欲の確信犯的な経営者もいましたが・・・)
一方、企業を取り巻く人たちは必ずしも経済原則優先ではありません。給料さえ高ければたくさんの社員が集まり、全員が一生懸命働く訳ではありません。値段が安いほど物が売れる訳でもありません。仕事そのものへの興味だったり、ブランドの知名度やステータスだったり、価値基準はいろいろです。
企業がモラルを保ち、自浄作用を働かせるためには、実は「社員」の声を聞くことが大切なのではないかと思っています。経営者にとって一番身近な第三者であり、社内事情をよく知り、経済原則優先でない判断基準を持つ人たちだからです。
もしも業績が上がるからと法を犯す経営者に、社員一同が諸手を挙げて賛同することは、まず考えられません。多くの不祥事で社員たちは、発覚した時のことを想像しながら内心で「困ったことだ」と思い、それでも「意見が言えない」ということだったのではないでしょうか。最近は内部告発のような形で問題が表面化することが多いですが、社内で自浄作用が期待できるなら、このようなことにはならなかったでしょう。社員たちにとって止むに止まれずの行動だったのだろうと思います。
自分の会社がモラルに反していると知った社員に、やる気が出る訳がありません。逆に経営者が自身の判断の偏りを正すために「社員」と声を聞こうとするならば、社員のモチベーションにもつながっていくのだろうと思います。
「謙虚に身近な人の声を聞く」。簡単なようでなかなか出来ないことですが、心掛けなければならないですね。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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