会社が辞めさせたいと考える社員に対して、自主退職に追い込むことを目的として設けられた「追い出し部屋」の問題が取り上げられるようになってから、ずいぶん時間が経ちました。
結構な有名企業が多数指摘を受け、社長名などでその存在を否定したりしていますが、これだけいろいろなところから話が出て来るということは、やはり何らかの行為があったと考える方が自然でしょう。
中には「解雇規制が厳しいからこんなことが起こる」というような経営者がいるようですが、同じ論法でいけば、「制限速度があるからスピード違反が増える」といっているようなものなので、ちょっと逆ギレの論外な話のように感じます。
先日あるところで読んだ記事には、この逆パターンのような「逆・追い出し部屋」なるものがあるそうです。他に転職できる先がないことを見越して、低賃金でつらい仕事を続けさせ、本人が辞めたいと言っても絶対に辞めさせないように仕向けるのだそうです。
かたやいかにして本人に辞めると言わせるかに力を使い、かたやいかに安くこき使って辞めさせないかを工夫するということで、どちらも相手の弱みに付け込んでひどいと思いますが、一方で、そこまで会社に振り回されても、なおかつ会社にしがみつかなければならない事情の人たちが大勢いるということには、少々問題を感じます。
もちろんローンなどの借金を抱えていたり、貯えに余裕がなかったりするなど、事情がある人はたくさんいるでしょう。年齢が上がるほど再就職が難しくなるということも確かにあります。しかし、自分が持っている仕事の能力面で考えた時、それほど外の環境では使い物にならない、潰しが効かないローカルなスキルばかりのはずはないと思います。もしも仕事の能力が本当にその程度だとしたら、会社依存の度が過ぎた、スキルアップの努力を怠っていたという面があると言わざるを得ないでしょう。
採用活動などでも同じことが言えるのですが、結局このあたりは、人を雇用する会社の側と、そこで働く人、働こうとする人の力関係のバランスが偏ってしまうことで起こってしまう問題です。雇う側の方が力関係は強くなりがちなので、何らかの規制が必要なことは間違いありませんが、働く人たちの側でも、バランスを取り戻す工夫、努力、取り組みが必要だと思います。
そんな形で力関係がバランスするようになって来れば、こんなイヤな話はずいぶん減ってくるのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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