不正や悲惨な出来事などへの怒りは、自らの理想を傷つけられたことへの心の防衛反応

前回の「怒り」に関する記事は、他人の言動や態度による心の傷つきの話でしたが、今回は不正や悲惨な出来事などに対する怒りの感情について考察します。

最初にTwitterのツイートを再掲します。

不正や悲惨な出来事などを目にした時の「怒り」にも、心の傷つきが伴います。それは漠然とでも誰もが思い描く、自分なりの「理想」や、その理想を実現したい、実現する力が自分にはあると思う自信（自己効力感）が打ち砕かれるような悲しく辛い体験です…

今回はこの理由について、自己心理学の理論を借りて説明させていただきます。

人間には「野心」と「理想」を追い求める根源的な傾向がある：

詳しくは自己愛講座に書かせていただく予定ですが、自己心理学では人間の心には「野心」と「理想」を追い求める根源的な傾向があると考えられています。

ここでの野心とは一般的には「自信」と呼ばれる、自分には色々な物事を達成する力があると信じられる感覚のことです。

これもあまりに自信過剰では問題ですが、逆にまったく自信が持てないと、今度は怖くて何もできなくなってしまい、それも大問題です。

またこのような野心（自信）は、自分の考えや感情を「他人から認めてもらう」ことによって育っていくとも言われています。

次の理想とは色々な人との関わりの中で影響を受けながら形成されていく、自分にとって「良いもの」と感じられる感覚の総体です。

この理想もあまりに高望みではかえって苦しみをもたらしますが、適度に努力すれば達成可能なものであれば、それは日々の生活のモチベーションや人生の目標に欠かせないものとなります。

もし仮にまったく理想を持たないで生きれば、生きる意味さえ失われてしまい兼ねません。

野心と理想は健全な自尊を感じるために必要不可欠な要素：

さらに野心も理想も、ともに人間が健全な状態で生きて行くためには欠かせないものであると共に、自己心理学ではこの二つは適度な自尊心（自分が価値ある存在だと感じられる感覚）を感じるためにも必要不可欠な要素と考えられています。

こ のように野心、理想ともに自尊心の核となる要素であることから、その自尊心を得るために私たちには、たとえハッキリとは自覚されなかったとしても「自分の 理想が社会から価値あるものとして認められ、それがどんどん広がって行って欲しい」という欲求が生じることが予想されます。

自らの理想を傷つけられたことへによる心の痛みへの防衛反応としての怒り：

ですから冒頭のTwitterのツイートにあるような「不正や悲惨な出来事」を目の当たりにしますと、社会が自分の理想とはかけ離れた状態であるという辛い 現実を突き付けられ、そのことが心の痛みとして感じられることから、その心の痛みから自分を守るための反応としての怒りが生じるのではないかと考えられま す。