小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ日本経団連の「人材の確保・定着・育成に関する報告書」を見て
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先日、日本経団連がまとめて公開した「中小企業を支える人材の確保・定着・育成に関する報告書」を拝見しました。資料としてまとめられた背景としては、一部の大企業の除いてはまだまだ厳しい経済環境という中で、今後、中小企業の持続的な成長を実現していくためには、競争力の源泉である人材の確保・定着・育成が不可欠な要件であるとして、そのポイントや企業事例をまとめ、具体的に参考として実際の改善に活用してもらえれば、ということのようです。
特に企業事例の方を見て思ったことですが、一つ一つ行われている活動はそれほど目新しいことではなく、既にいろいろな所で紹介されているような物を自社なりにアレンジして取り入れているような事が大半だということと、「この制度を取り入れたおかげで良くなったのだろうと思う」というような肌感覚から判断しているような評価が多かったということです。
これは決して批判的に言っている訳ではなく、人事上の施策は「人」を扱うという性質上、そんなに奇抜だったりユニークだったりするものはなかなか見出しづらいですし、(奇抜イコールちょっと乱暴?という場合もある) 実施した施策の評価と言われても、結局は施策に直接関わらない様々な要因も含めた総合的な結果であり、人事担当者からすれば「うーん、この施策を取り入れてから徐々に変わっては来ているから、まあ効果はあるんだろうなあ・・・」という感じだと思うので、事後評価でなおかつ感覚値になるのは仕方がないと思います。
この中ですべての事例に共通していたのは、「一人一人の応募者や社員とできる限り真摯に向き合う」ための施策を、効果があると信じて「確実に実行、継続している」ということです。要は自分たちが良かれと信じたこと(人事上の原理原則を踏まえた施策)を、徹底してやり続けているということで、人事担当の思い入れや思い込みも多分にあるということだと思います。ですから施策自体の評価も感覚的になってしまうのでしょう。
私がこの報告書で参考にすべきと思ったのは、施策の事例そのものではなく、会社として良いと思い込んだことを、目的を忘れずにやり続けるという基本姿勢でした。この中に出ている施策だけ真似をしても、基本姿勢が伴っていなければ多分効果は出ないだろうと思います。この報告書を参考にするにあたって、この点だけは間違ってはいけないと思います。
報告書自体は経団連のホームページにアップされていますので、一度参考にご覧になってみてはいかがでしょうか。
(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/064/index.html)
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