小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「「見て盗め」と「手取り足取り」の使い分け」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
ユニティ・サポート 代表
Q&A回答への評価:
4.7/75件
サービス:4件
Q&A:193件
コラム:842件
写真:0件
お気軽にお問い合わせください
03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。
印刷画面へ
専門家への個別相談、仕事の依頼、見積の請求などは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
問い合わせ
専門家への取材依頼、執筆や講演の依頼などは、こちらからお問い合わせください。
取材の依頼

「見て盗め」と「手取り足取り」の使い分け

- good

社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験 2023-03-30 21:19

 部下や後輩に仕事を教えようとするとき、特に中小企業では、実際の業務を通じたOJTでおこなっていくことがほとんどだと思います。

 必ずしも研修制度が整っていないせいもあるでしょうが、実務を通じて教えた方が手っ取り早いですし、そもそも仕事が教えられるレベルの人材は現場で中心的な役割であり、教えることにあまり手間がかけられないのは仕方がありません。


 こういう中で、「教えてもらえないのが当たり前」「仕事は見て盗め」という人がいます。自分はそれで仕事を覚えてきたという自負がある人ほど、こういう言い方をします。

 そこまでではなくても、例えば「何かあったら質問しなさい」などといっていることがよくありますが、これも遠回しの「見て盗め」の一種です。

 「何かあったら…」など、仕事を教わる側からの発信にすべて委ねてしまうと、「何かあったかなかったかがわからない」など、そもそもの判断基準がなかったりします。また、「相手が忙しそう」「すでに教わったことかも」「こんな質問は迷惑では」などと躊躇することがたくさんあります。

 躊躇するのは余分な時間を要することなので、仕事が効率的に身につけられる状態ではありません。職人的な手作業のように、反復して数をこなして覚えることであれば、質問が常に出てくるわけではないので相手に委ねても大丈夫かもしれませんが、通常はやはり教える側から相手の様子を観察し、こちらから働きかけることが必要でしょう。


 これに対して、何でもつきっきりで教える「手取り足取り」の人がいます。

 よく言えば面倒見が良く、反面では自主性を奪っているともいえますが、こういう人の問題は「すぐに答えを教えてしまうこと」です。場合によっては「こちらでやっておくから」などといって、仕事を取り上げてしまうこともあります。

 多くの場合は教える側の親切心で、それが良かれと思ってやっていますが、特に知識を積み上げなければならないような仕事では、教えられる側が自分で考える機会を奪われるので、こちらも仕事の習得や習熟が遅れます。


 こんなことから、「見て盗め」と「手取り足取り」は、場面に応じてうまく使い分けなければなりません。

 「見て盗め」で意図をもって考えさせるのはよいですが、行き過ぎると「放置」になります。

 「手取り足取り」は、基本を細かく教えるなどの意図があればよいですが、同じく行き過ぎると「過干渉」となります。

 こう考えると、「放置」でも「過干渉」でもない中間で、バランスを取ることが必要になります。相手の性格や能力も考慮しなければなりません。


 気をつけなければならないのは、その人が過去に受けてきた育成方法が自分の成功体験であった場合、そのやり方に偏ってしまう傾向があることです。

 必ずしも相手の性格や能力に合わない指導が継続されることにつながり、相手の成長を遅れさせる恐れがあります。自分のやり方にこだわらない柔軟さが必要です。

 スポーツ指導の場で、監督やコーチによる暴力が問題になることがありますが、これも根は同じことです。過去に自分がそういう指導を受けてきて、そのおかげで強くなったなどの自負があれば、自分の体験と同じような指導方法を繰り返します。その引き出しだけしかなくなってしまうのです。


 「見て盗め」と「手取り足取り」の使い分けもそうですが、人材育成においては、自分がうまくいったと思っている成功体験がある人ほど、本当にそれで良いのかと問い直す必要があります。



カテゴリ 「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム

カテゴリ このコラムに関連するサービス

対面相談 【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断

中小法人限定で当事者には気づきづらい組織課題を社員ヒアリングで診断。自社の組織改善に活かして下さい。

料金
無料

組織の課題は、当事者しかわからない事とともに、当事者であるために気づきづらい事があります。これまでの組織コンサルティングで、様々な組織課題とその改善プロセスにかかわった経験から、貴社社員へのヒアリング調査によって組織課題を明らかにし、その原因分析や対策をアドバイスします。予算がない、依頼先を見つけられないなど、社外への依頼が難しい中小法人限定です。社員ヒアリングのみで行う簡易診断になります。

【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断
プロフィール評価・口コミ対応業務経歴・実績連絡先・アクセスサービスQ&Aコラム