小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「あるCEOが語った「若い社員への“違和感”」に対する”違和感”」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
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小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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あるCEOが語った「若い社員への“違和感”」に対する”違和感”

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 私の思い・考え 2023-03-01 22:03

 数年前ですが、あるニュースサイトに掲載された某有名企業CEOが語る仕事論についてのお話です。当時はネットを中心に、悪い意味でちょっと話題になりました。

 

 タイトルが「若い社員への"違和感"」というものでしたが、後日タイトル変更されており、「部下は上司から、上司は部下から学びなさい」となっていました。

 数多くの突っ込みがあって変更したと思われますが、その内容にはツイッターなどで数多くの違和感を示され、「突っ込みどころしかない」「見事な時代遅れ」「まさに老害」などの手厳しいコメントが列挙されていました。

 

 記事の見出しや転載で要約されていた内容は、私から見ると典型的な「今どきの若者批判」で、これでは指摘されても仕方がないと思いました。

 もしかすると、要約された内容は本来のニュアンスとギャップがあるのではないかと思い、掲載記事は全文を読んでみましたが、それでも私の感想は初めに思ったこととほとんど変わらず、世代間ギャップに対する違和感の列挙、若い世代の仕事ぶり批判としか感じられませんでした。私の世代であれば、言いたいことを理解できなくもないですが、今ではあまりにも時代遅れな感性です。

 

 記事によれば、今の若い人たちは「喜怒哀楽をあまり外に出さないように見え…」「マイホームやマイカーなど、我々の世代が持っていた欲望もあまり持たず…」だそうですが、なぜ感情の起伏を見せることが良いのかわかりませんし、物欲などはあってもなくてもよいことです。これは「上昇志向至上主義」の発想としか思えません。

 

 特に違和感が拭えなかったのは、IT活用について語られている部分で、若者たちのスタンスが自分の世代と違い、特にメールの使い方について、「一方通行なので表現によっては人を傷つけていることがあってもわからないし、人間関係が希薄化することにもなりかねない」「メールによって職場が殺風景で機械的になっていることに、危機感を感じていない」とありました。

 

 確かに直接相手の表情を見ながらコミュニケーションするのが大切なことに異論はありませんが、今の若者はそのあたりをわきまえていて、様々なコミュニケーションツールを、それぞれの特徴に合わせて使い分けています。

 中には直接言いにくいからラインだけで済まそうとするなど、あまり良くないケースもありますが、仕事の上では期限、相手の状況、情報共有する範囲、記録として残す必要性の有無など、状況を総合判断して、直接の会話、電話、メール、ビデオ通話、ショートメッセージ、ライン、メッセンジャー、その他チャットツールなどを使い分けます。少なくとも「会話」「電話」「メール」の三択ではありません。

 他にも、「組織内のエスカレーションのルールを守れ」といった話があり、それは確かに基本ではありますが、それが行き過ぎると悪い意味での官僚組織となって、組織の意思決定のスピードは圧倒的に遅くなります。これはあくまで程度問題でしょう。

 

 私が一番気になるのは、この古い感覚が見え隠れするトップメッセージが、メディアを通じて記事になるにあたって、周りの関係者たちは何を思ったのだろうかということです。

 もしかすると事前に共有される機会はなかったのかもしれませんが、このCEOの話に多くの人が賛同していて異論がなかったとすれば、この会社内の価値観が、世間一般とずれている組織の閉塞性を心配します。

 また、異論があっても言わなかったのだとすれば、上意下達で物を言いづらい企業風土の可能性があり、組織内のコミュニケーションとして問題があります。記事の中にデジタル化の弊害のように書かれていた「職場が殺風景で機械的」という原因は、実はこの企業風土にあるのかもしれません。

 「一般には通じない社内用語のローカルルールがある」という話も出ていましたが、これも閉鎖的な企業文化の問題という感じがしてしまいます。

 

 記事に書かれていたことは、一般論としては理解できることも含まれていますが、大企業トップの発信としては、ずいぶん一方的で視野が狭い感じがしてしまいます。

 企業文化というのは、こんな些細なところから見えてくるものですが、実際はどうなのでしょうか。そして現在のこの会社の内情は、いったいどうなっているのかが気になります。

 

 

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