小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「「インセンティブ」のつもりが「インセンティブ」にならないこと」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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「インセンティブ」のつもりが「インセンティブ」にならないこと

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験 2022-06-09 07:00

 「インセンティブ」とは、奨励や刺激、報奨を意味している言葉です。

 ある知り合いの社長は、社員のモチベーションを大きく上げるため、次の賞与を思い切って増額するそうです。増額分は高評価者を中心に振り分け、それまでの努力に報いることを見せつけて、多くの社員のやる気アップにつなげたいそうです。

 「インセンティブがなければ人は行動しない」「経営者はインセンティブを用意しなければならない」と考えて、そのための投資という位置づけだそうです。

 

 経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の著書の中に、「人間はインセンティブの奴隷」という言葉があります。「人は自分がやりたいと思うことに忠実に従う」とのことで、動機が不十分では自分の目的達成を優先するので、社員のインセンティブと会社の方向性を合わせなければ、社員が持つ本当の力を発揮させることはできないという話です。

 

 この言葉からすれば、「インセンティブ」を用意するのは正しいことです。ただ、最近の企業の現場を見ていて、「高評価者へのインセンティブ」が、思い通りの効果を発揮するのは、たぶん難しいと感じます。

 その理由は、用意されたインセンティブが「金銭」に限られているからです。しいていえば、それにつながる「名誉」と「優越感」くらいはあるかもしれません。

 「お金をもらって困る人はいない」「お金をもらえばうれしいだろう」と言われれば確かにそうでしょうが、それで一生懸命働くようになるかと言えば、それはまた別の問題です。

 

 20代、30代の若い世代は、「物を買わなくなった」などと言われますが、自分にとって必要なものには積極的にお金を使います。ただし、必要と考える物は人それぞれで、テレビや冷蔵庫など多くの人が所有しているものでも不要という人がいます。

 将来に備えて貯金したりもしますが、明確な目的がなければそれほど執着はしません。どうしても欲しいものはそれほど多くなく、「今たくさんお金をもらっても、使い道がなくて困ってしまう」などという人もいます。

 つまり、多くの人にとって共通の「インセンティブ」になり得るものが、なくなってきているということです。

 

 かつては「お金」や「役職」「地位」「肩書」などが共通のインセンティブになっていましたが、今はそうではありません。「お金」より「時間」や「場所」や「仕事内容」であったり、「会社のため」よりは「社会のため」「家族のため」であったりします。「役職」に就くことを嫌がり、あえて良い評価を望まない人がいます。

 

 しかし、いま会社経営にあたっている中高年世代は、こういう感覚がなかなか理解できません。そもそも企業の中で一定以上の地位に達した人たちであり、会社が用意した「給料」「役職」といったインセンティブをモチベーションにして、それを手に入れながら勝ち残ってきた人たちです。自分の体験とは正反対の価値観を理解できないのは無理もありません。

 

 今の時代、多くの人にまんべんなく受け入れられるようなインセンティブは、なかなか見つけられなくなっています。従業員満足度が高いといわれるある会社では、社員一人一人の価値観に細かく向き合って、インセンティブになり得るものを個別に用意しています。「休暇」「学び」「勤務条件」「仕事内容」「家族サービス」ほか、大きなものから小さなものまでいろいろです。

 

 人の志向や行動を一律の価値観でとらえる考え方は、すでに成り立たなくなりつつあります。手間がかかるとしても、個人に向き合った多様なインセンティブが用意できる風土と仕組みを持つ会社でなければ、生き残りが難しくなっていくのかもしれません。

 

 

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