小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「口出しするが手は出さない上司」と「自分でやって部下に任せない上司」
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それぞれ別の会社ですが、上司に対するこんな批判を聞きました。
一つは、自分の上司が「口は出すが手は出さない」という話です。
上司に指示を仰ぐと「君に任せた」というそうですが、仕事を進める途中で「ああだこうだ」といろいろ口出しされるそうです。その口出しは問題指摘ばかりで具体的な対策の指示や支援はなく、さらに自力で考えながら仕事を進めていると、また同じように口出ししてくるそうです。
本人としては手戻りを防きたいので、途中でいろいろ確認しに行きますが、そこで具体的な指示はなく、ある程度ゴールが見えてきたときに口を出されて手戻りが起こる繰り返しだそうです。
「一方的なダメ出しばかり」「自分では何もしようとしない」「まるで評論家」という上司への不満が積み重なっているとのことです。
もう一つは、上司が「自分でやって部下に任せない」という話です。
部下に任せず仕事が回るならまだよいのかもしれませんが、その上司がいろいろ抱え込んでしまうせいで、いつまでもペンディングになっている課題があったり、期限遅れが生じたりするなど、問題がいろいろ出るそうです。
上司が仕事の全体像をあまり伝えてくれず、たまに指示があっても単純作業のようなものばかりで、それに嫌気がさして辞めてしまう者もいたようです。
部下たちは、「任せてくれないので仕事が覚えられない」「同じような仕事ばかりで成長できない」「期限が迫った仕事ばかり押し付けられる」「単純作業ばかりで仕事が面白くない」などの不満があるそうです。
「手を出さない」もしくは「任せない」という上司には、程度の違いはあったとしても、みんな一度や二度は出会ったことがあるのではないかと思いますが、一見すると正反対、両極端のタイプに見えるものの、どちらにも当てはまる共通点があります。
それは、部下に「実質的には仕事を任せていないこと」と、「仕事を教えていない、指導していないこと」です。
それぞれで違っているのは、その行動に結びついている前提、背景にあたる部分です。
「口出しばかり」の上司は、あえて本人に考えさせようとしている可能性もないとは言えませんが、もしそうだとしても、自分は解決策を持ち合わせていないと思われます。それは部下に仕事を教えられるだけのスキル、経験がないということになります。
口出しするのが上司としての精いっぱいのプライドなのかもしれませんし、もしかすると、まったくの専門外の人なのかもしれません。それでは口出しの中身が適切なものとは思えません。
一方、「自分でやって任せない」という上司は、本人に業務スキルはあっても、それを教えようとしていません。「見て覚えろ」という古い価値観の人かもしれませんし、自分の仕事を取られたくない、自分でやらなければ気が済まないなど、自分勝手な任せない理由があるのかもしれません。確かなのは、育てることのメリットもあまり感じていないのか、部下に育ってほしいという思いが希薄なことです。
こういう上司に対して、部下の立場からできることは意外に少なく、どちらの場合も根気よくアプローチをしていくくらいしか手段がありません。それを続ける根気にも限度があるでしょう。
これらのケースは、さらに上席の管理者からの上司本人への指導、この上司をフォローする要員の配置、さらに上司の部署異動というところまで考慮する必要があります。会社全体の人事まで含めて考えなければなりません。
しかし、このような上司と部下の間での実務上の問題は、当事者だけに閉じ込められているケースが多いです。たいていは「部下が上司のやり方に合わせる」という話で終わっています。
上司と部下の間の問題を、当事者だけで解決するのは難しいことで、特に上司の側に問題がある場合、これを立場が下で権限も少ない部下たちの力だけ解決することはできません。ここでは当事者以外の周りの人たちの協力が必要になります。問題上司は部下たちに不幸をもたらし、その不幸はやがて組織全体に蔓延していきます。
組織で起こる問題は、組織に属する全員が当事者だということを忘れてはいけません。
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