小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ似ているようで実は違う「管理」と「マネジメント」
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マネジメントやリーダーシップは、多くの企業で課題になっています。自社の状況を称して、「うちの部課長たちは管理能力がない」「部下の管理ができていない」などという話を良く聞きます。
こんな表現に代表されるように、組織における「マネジメント」と「管理」は同じニュアンスで語られることが多いですが、実際には「管理」と「マネジメント」には大きな違いがあります。
「管理」という言葉を辞書で調べると、
1.ある規準などから外れないよう、全体を統制すること。
2.事が円滑に運ぶよう、事務を処理し、設備などを保存維持していくこと。
3.法律上、財産や施設などの現状を維持し、また、その目的にそった範囲内で利用・改良などを図ること。
とあります。
これは「決まった基準、枠組み、ルールに合わせて、それを維持、継続させる」という意味合いが強いです。しかし、企業での事業推進のために必要なことは、これだけではありません。
ここで「マネジメント」という言葉も調べると、確かに“管理”や〝経営“と出てきますから、単語の和訳としてはそういうことなのでしょうが、別のところでもう少し調べると、以下のような定義があります。
・主にビジネス上における様々な資源や資産・リスクなどを管理し、経営上の効果を最適化しようとする手法。
・“管理”という意味合いの他にも、”評価・分析・選択・改善・回避・統合・計画・調整・指揮・統制・組織化”など様々な要素を含んでおり、これらを総合した概念。
実態から見れば、こちらの方がフィットしている感じがします。
なぜこんな切り分けをしたかというと、「管理」と「マネジメント」を同列で表現している会社では、実際の取り組みでも、辞書にあるような意味合いに近い「管理」の動きが多いということです。
“部下が計画通りに動いているか”、“指示通りにことが運んでいるか”、“ルールを守っているか”などを確認するといった意味での「管理」で、これは言い換えると、“監視”や“見張り”となります。
もちろん、実際の現場では必要なことですが、本来の「マネジメント」は、これだけではありません。決められたルールが不都合ならば見直さなければなりませんし、これまでとは違う指示が下りてくれば、それなりの変更、調整をしなければなりません。
過去データの分析や、計画や人員配置の見直し、プロセスの改善、物事の優先順位の見極め、その他仕事の成否に関わることは、すべてやらなければなりません。これは「管理」というよりは「やりくり」に近いです。
「マネジメント」を「管理」だと考えていると、計画や基準に合っているかを見張るだけで、そこから逸脱しそうなものを食い止め、叱責することばかりに注力するようになります。決められた通りに仕事をすることに偏るので、新しいものは生まれてきません。
「マネジメント」を「管理」ではなく、「経営資源として与えられたリソースの中でのやりくり」と考えると、マネージャーの行動そのものが変わってくるのではないでしょうか。
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