小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「仕事ができない上司」を支える部下に会社は甘えてはいけない
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あるアンケート調査で、20~30代の会社員の男女各100人に、「上司」に対するスタンスについて聞いたところ、「優しいけど仕事のできない上司」と「冷たいけど仕事のできる上司」のどちらのタイプがよいかという質問では、68%の人が「冷たいけど仕事のできる上司」の方がいいと答えたそうです。
しかし、「優しいけど仕事のできない上司の部下になってしまった場合、どんな接し方をするか?」という問いには、「なんとかして上司を支える」との答えが74%、「なんとかして上司を追い落とす」との答えが26%で、部下の4人に3人は「支える」と答えたとのことです。
なんだかんだ言ってもやさしい部下が多いとコメントされていましたが、ここには意外に大きな問題をはらんでいます。
これを組織上の課題としてみれば、「仕事ができない上司」は、責任や権限を持つ立場なのに能力不足ということなので、仕事上の悪影響は、“できない部下”よりも圧倒的に大きいです。
本来ならば一刻も早くその上司を職責から外して、そのポジションは他の人材に任せるべきですが、実際にそうなることは、特に一般的な日本企業では多くありません。
“代わりになる人材がいない”、“解雇できないから、だましだましでも使わなければならない”など、理由はいろいろいわれますが、私が見ていて思うのは、実は会社側が、その上司に問題がある状況を、把握できていないことの多さです。
把握できない最も大きな理由は、その上司の無能さを部下たちがカバーしているおかげで、上司自身の問題が、あまりクローズアップされないで済んでしまっていることにあります。現場からの不満の声があまりなく、部門の業績がそこそこのものであったりすれば、まさにこの状況になります。
組織内でお互い助け合っているのは好ましいとして、仮に出ている結果が平均的だったとしても、それは上司のマイナスを部下がカバーして、何とか持ち直したのかもしれませんし、本当はもっと伸ばせる余地があったのかもしれません。結果の中身をよく見なければ、どんな状況から得られたものなのかがわかりません。
「仕事ができない上司」をフォローしようと考える部下が多いことは、組織を構成するメンバーの関係性としては良いことです。私も、フォロワーシップやアサーションなど、前向きに上司をフォローするという考え方の研修をします。
ただ、この部下たちのフォローに甘えていると、「仕事のできない上司」が、実際にはどんな状況で何ができていないのか、どんな悪影響が出ているのかといったことが、周りからは見えなくなってしまいます。
上司を管理する上席者は、現場の細かな状況には介在しないことが多く、その「仕事ができない上司」からの報告と、結果として見える数字で状況把握をしていることが多いでしょう。しかし、それでは本当の状況はわかりません。
上司の無能さを部下の立場から発言することは、これを上司批判、他責、後ろ向きな態度などと評価される恐れがあるので、簡単に言い出せるものではありません。
「仕事ができない上司」を、部下たちが前向きにとらえてフォローしようとすればするほど、本質的な問題は潜在化していきます。そうならないためには、「仕事ができない上司」の仕事ぶりを、さらに上の立場の者がきちんと把握している必要があります。
会社がその上司の状況を把握して、会社側から部下たちに状況確認を働きかけなければ、具体的な情報は上がってきません。
ダメな上司を支えようとする部下に、会社が甘えていると、組織の課題はどんどん見えなくなってしまいます。
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