小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「やる気が出ない理由」を解決するとやる気が出るのか
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組織風土や企業の課題を調べる一環で、社員の皆さんに対するヒアリングやインタビューをすることがあります。そういう場では、会社に対する不平不満の話は、当然のように出てきます。
その中身は、事業展開や商品、提供サービスといった経営に関するもの、社内制度や仕組み、「給料が安い」「休みが取れない」「仕事がつまらない」といった労働環境にかかわるもの、「あの上司の態度が悪い」「指示をするときの言い方が悪い」などといったコミュニケーションに関するもの、人の好き嫌いや相性といったといった人間関係にまつわるもの、その他多岐に渡ります。
あらゆるものが不平、不満、批判の対象になりますが、そこで「だからやる気が出ない」「だからモチベーションが上がらない」と言う人がいます。
確かにやる気の火を消してしまうような動きが、組織内に存在することはあります。そのことが、社内の生産性や業績自体に悪影響を及ぼしていることもあります。
もちろん大きな課題なので、対策はいろいろ考えますが、それを実行することや、もしうまくいって課題が解決したとしても、それで社員のやる気やモチベーションが上がるかといえば、決してそういうものではありません。
ある会社で話を聴いた社員の方は、社内の人事評価結果があまり良くない方でしたが、それは「給料が安く、自分が希望する仕事ができていないせいで、やる気が出ないためだ」と言います。他にも日常的な細かいことで、自分のやる気を失わせることが、自分の周りにいかに多いかということを、延々と話をします。
あまりにも他責が過ぎると感じたので、失礼ながら私から一言、「では○○さんは、今の話がすべて解決されたら、見違えるようにやる気にあふれて仕事に取り組むようになるのですか?」と尋ねると、一瞬ハッとした顔になり、そのまま黙ってしまいました。
その人には「今の他責の姿勢では、いつまで経ってもやる気は出ないし、周りから評価もされない」「やる気が出ないと言って、力をセーブしているつもりが、いつの間にかそれが実力になってしまう」など、ちょっと説教じみた話をしましたが、これが何でも他責にしてしまうことの怖さです。
また、こういう人たちが言う「やる気が出ない」という理由を解決してあげたとしても、それでやる気が出ることは絶対にありません。安い給料をアップしたとしても、上司が気を遣うようになったとしても、結局は次のやる気が出ない理由を探してくるだけです。
これほど極端ではなくても、自分のやる気が出ないことを周りのせいにしているケースは、意外に多く見かけます。
やる気が出なくて損をするのは、結局は自分自身です。どんな人にも不平不満はありますが、もしも他責が過ぎていると感じたら、「その問題が解決すれば、本当にやる気が出るのか?」と、自分に問いかけてみて欲しいと思います。
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