小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「意見がない」のか、「意見があっても言えない」のか
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ある会社での、部長とリーダーのやり取りからです。
部長はリーダーに、「もっと積極的にいろいろな提案をして、自分から動いてほしい」と言っています。全般的に自分から率先して動き出したり、周囲を巻き込んだりしていくような行動が、少し不足しているようです。
これに対するリーダーの反応は、「はい・・・」「そうですね・・・」と今一つ前向きな感じではありません。性格的にはちょっとおとなしそうなタイプにも見えるので、自分が先頭に立って動くようなことは、あまり得意ではないのかもしれません。
このやり取りの中で、私からリーダーに、「意見があっても言いづらい場合と、そもそも自分が気に留めていないことで意見自体がない場合と、どちらが多いですか?」と尋ねてみました。
リーダーはしばらく考えて、「うーん・・・。半々くらいですかね・・・」という答えです。
これはだいたい想定通りの答えで、この質問を誰にしたとしても、「言えないことも考えてないことも、時と場合によって両方がある」ということが大半です。
ではその割合はどうかというと、本人の性格や能力によっていろいろですが、少なくとも「全部言えないことばかり」か、もしくは「何一つ考えていない」という両極端の人には、いまだに出会ったことがありません。ほぼすべての人が、この両方の経験を持っています。
これがどういうことかというと、「意見がない」ということについては、考える能力を身につけさせなければならないということで、業務経験や教育研修、その他の経験などを通じて、時間を掛けなければ変わっていきません。そもそも能力的に厳しいのかもしれません。
一方、「意見があっても言えない」というのは、自分なりに考える力はあるということであり、言いやすい雰囲気作りや聞こうとする姿勢など、周りの環境を少し変えれば、それを表現できるかもしれないということです。短期的に変われる可能性があるということで、多くの人はすぐに変われる可能性を一部で持っているということです。
こういう話をしたときに、上司の反応で多いのは、「そこまでするのは甘やかしすぎ」「リーダーならば、それくらいは自分で何とかすべき」というようなことです。
確かにそれは間違いではありません。私でも「それなりの経験もあって、相応の立場になっているのだから、それくらいは自分でどうにかしてほしい」と言いたいこともあります。
しかし、そう言い切ってしまうのは、「相手が変わらない限り、自分は変われない」と言っているのと同じで、結局は現状をそのまま放置するということにつながります。
それよりは、意見を持っているならばそれを吸い上げる環境を作り、言っても大丈夫だという成功体験をさせ、自発的に考える習慣づけをしていった方が、会社としての情報収集や、リーダーの人材育成としてもプラスが多いと思います。
相手がリーダークラスともなると、つい「自分で何とかしろ!」と言いたくなってしまいますが、会社の変革や進歩につながるならば、多少の甘やかしと思われることでも実行すべきです。
「当たり前」「常識」と言って相手任せにするよりは、何かしらの働きかけで少しでも良い方向に変わるなら、それをやってみてはいかがでしょうか。
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