小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ意見を匿名にしたがる若手社員
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少し前の話ですが、ある企業で若手社員向け研修を行ったときのことです。
毎月一回で6ヶ月の内容だったので、同じ受講者と何度も顔を合わせます。多くの研修と同じで、毎回の終了時に受講者アンケートを書いてもらいますが、ある方がそのアンケートに自分の名前を書くことをやたらと嫌がるのです。
初回は無記名で、なぜ記名アンケートなのかという苦情がつらつらと書いてあります。ただ、他の方は記名しているので、結局誰かはわかってしまいます。
2回目のアンケート記入時に、私から「会社の上司などに提供するわけではないので、おかしな被害が及ぶ懸念はないこと」「そうは言っても記名がない意見では責任ある意見にならないし、検証のしようがないので記名が必要であること」などを説明したところ、しぶしぶ名字だけ書いてありましたが、中身の記述はあまりありませんでした。
3回目は、やっぱり逆戻りで無記名のまま、この研修に意味があるのかなどという否定的な意見が書いてありました。
最近はネット上などで匿名で、暴言に近い内容や他人の中傷めいた書き込みに関する話をよく聞きます。そう書込みをする人に限って、実際には寡黙でおとなしい人だったなどということも聞きます。
記名を嫌がるこの方には、別件でお話をうかがう機会があり、能力があるしっかりした方でしたが、会社に対する不満が強かったようでした。
もしかすると、自分が意見を述べることで何か中傷があったり、よほど実害があったのかもしれません。会社の対応にも問題があったかもしれませんが、だからといって匿名で発言すれば解決するという問題ではありません。
意見を言う側は、建設的に、攻撃的過ぎず、相手の納得が得られるように伝える努力が必要だし、意見を聞く側は、受け入れるべきものは謙虚に受け入れ、そうでないものは毅然とした態度で、やはり相手の納得が得られるように対応する、ということが大切です。
被害者と加害者がはっきりしている場合や、片方に何らかの被害が及ぶ恐れがある場合などは話が別ですが、組織内での一般的なやりとりの中で、匿名のまま意見を言い合うということは、基本的にはあり得ません。
匿名にしたいということには、反論が怖い、相手の反応が予測できない、思っていることを表現できないなど、いろいろな理由があるのかもしれませんが、結局はうまくコミュニケーションが取れていないということだと思います。
「コミュニケーション能力の低下」などと言われますが、こんなことも関係があるのかもしれないと感じた体験でした。
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