小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ企業ブランディングの中で起こった身の丈の勘違い
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最近聴講したある著名な経営者の講演の中で、印象に残ったことがあります。
その方は、事業発展を考える中で、優秀な人材獲得や顧客への説得力向上が必須要件で、そのためには会社の知名度を上げることが最も重要だと考え、会社のブランディングにとても注力されたのだそうです。
外向けには少し極端な表現をするなど、注目を浴びるような仕掛けを様々おこなって、結果として会社の知名度は上がり、それに伴って業績も伸びていったそうです。
ただ、そんな形で世間から認められていく中で、内向きには社員が勘違いしてしまうような状況があったのだそうです。要は「俺たちの会社ってすごいよね」「俺たちイケてるよね」というような、たぶん天狗になったような感じだったのだと思います。経営者自身はそれを戒めていても、社員の中にはそういう空気が漂っていってしまったようです。
ブランディングというと、外向きにどうアピールしていくか、外からどう見られるかということが主体ですし、私などもブランド力が高まれば良いことしかない程度の意識しか持っていませんでしたが、外からの見られ方が変わると内側にいる社員の意識も変わっていくということ、外向きのブランディングがうまくいけばいくほど、内向きにもいろいろな影響があるのだということです。
その影響が、「帰属意識が高まる」「愛社精神が増す」「仕事のやりがいを感じる」といった事ばかりならば良いですが、「調子に乗りすぎる」「天狗になる」「上から目線になる」「偉くなったと勘違いする」など、実はデメリットもあるのだということを知りました。
こう考えると、ブランディングというのは、外向きの宣伝や広報だけでなく、企業風土づくりの一部ということもできます。外向きには外向きのメッセージを、内向きには外に発したメッセージの意図の説明や引き締めが必要になるということです。
広報、宣伝、ブランディングといった、一見外向きの発信だけに見えるところまでが、実は内部の組織作りにもつながっていると意識できたことが、私にとっては大きな収穫でした。
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