最近、有名企業の経営陣の不祥事が、相次いで報道されています。明るみに出て来る内容を見ていると、あきれてしまうようなところもたくさんありますが、経営者と言われる方々がみんなそうである訳がなく、どちらかというとそんな話はごくごく少数で、世の中の経営者の大半は、真面目で地道に事業を行っている方々です。私もいろいろな方とお付き合いしますが、そんな不正を働くような不誠実な人に出会ったことは、まだありません。
皆さん本当に真面目に会社のことを考え、少しでも会社を良くすることが社員のためになると考え、懸命に頑張っていらっしゃいます。ただ、その想いが社員一人ひとりまできちんと届いているかというと、こちらは意外にそうではないように思います。
やはり経営者は会社で一番の権力者ですから、社員からの見方は厳しいです。良かれと思ってやっていることでも、それほど善意に解釈してくれないし、本人のため、会社のためと思い、心を鬼にして厳しく接しているのに、その真意はわかってくれません。
自分なりのうまい社員との距離感をお持ちの経営者は大勢いらっしゃり、私などもずいぶん参考にさせて頂きますが、社員との距離感に悩んでいる経営者も、これまた多いように思います。
「こんなこともわからないのか」「こんなこともできないのか」「なぜこんなことをするのか」「なぜこんなことを考えるのか」・・・・。それでも自分なりにいろいろ考えた上での施策を打ち出しますが、やはりなかなか理解してもらえません。
少し前にある会社であったことですが、社長さんが作られた社員向けの施策説明資料を拝見して、私は「これでは逆効果だな」と思ったことがあり、なぜそうしたのか、社長さんから説明して頂いたことがあります。私は第三者の立場なので、社員の皆さんと受けとめ方は少し違うかもしれませんが、良く話を聞けば、その背景や課題、理想像、社員の能力や性格まで、いろいろ考えた上での内容で、大変納得できるものでした。
ただ、「今の背景の説明がなければ、社員は理解できないよね」という話で、管理職の方々も含めてもう一度意識合わせをして、社長さんだけでなく他の人も背景を理解した上で説明ができるようにしました。施策自体も意見交換して手直しがありました。どうも社長さんが自分だけで考えていたようなところがあったようです。
私も第三者の立場を利用して説明をお手伝いしましたが、いろいろな立場の人がいろいろな場面で、いろいろな角度から様々なニュアンスで説明することで、ずいぶん納得感が変わったということがありました。
これは、今さらわかりきったことですが、「何を言うか」という話の内容の部分より、「誰が言うか」という人の部分が、納得感に大きく影響するということです。違う人が同じことを言うということも、納得感は高まります。「誰が言うか」「誰に言わせるか」というのは、伝えるということを考える上では、とても大切な事です。
社員との距離感の取り方がうまい経営者は、“他人を介しての自己表現”がうまいように思います。自分がいない所でも話題に上り、悪口も言われるけど褒められもしています。自分のことを理解して、話題にしてくれる人が周りにいることで、自分の知らない所で自分の人となりが理解されている、そんなところがあるように思います。要は直接接する人たちに認められ、好かれています。
私自身も少しでもその領域に近づければと、いつも思っています。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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