とても勢いがある伸び盛りの会社と、業績不振で何かと厳しい状況の会社に、それぞれおうかがいする機会がありました。
伸び盛りの会社(以降A社とします)の方は初めての訪問で、ちょうど昼休みの終わり頃にうかがったのですが、受付スペース(結構広くて立派でした)で待っていると、通りがかる社員の方々が、みんな大きな声と笑顔で「こんにちは!」と挨拶してくれるのです。初めはお迎えの人が来たのかと勘違いするほどでした。お会いした方々も自分たちのビジネスの話を「こんな企画を考えている」「こんな計画がある」などと次々話して頂き、実に明るく前向きでした。私の仕事につながった訳ではなかったのですが、何となくすがすがしい良い気分になってしまいました。
一方業績が厳しい会社(以降B社とします)ですが、お会いした方は何となく疲れている感じ・・・。ずいぶんお忙しいようです。とにかく目の前のことをこなすのが大変みたいで、他の社員も自分のことで精一杯の様子です。先のことを聞いても、見通せないので何とも言えないとのこと。「自分もいつどうなるかわからないし・・・」と前向きとはちょっと程遠い感じでした。
この両社のお話の中で、私が感じた一番大きな違いは、“他人を気に掛ける余裕の有無”でした。
A社の挨拶などは一番わかりやすいのですが、挨拶それ自体の意味がそもそも存在を確認しあう行為なので、しっかり挨拶ができる会社は他人への関心が高いといえます。こういう会社は訪問者やお客様だけでなく、社員同士も積極的に挨拶します。もちろん日々の教育や指導もありますが、どんなに教えてもできない所はできません。最終的にはそれぞれの人が、他人に関心を持っているかどうかにかかってくるからです。
B社の方も、決して挨拶しない訳でも、礼儀がダメな訳でもないのですが、先のことが見えづらくなると人間は不安になり、まず自分を守ろうとする・・・。結果として他人を気遣う余裕がなくなってしまいます。他人に気を配ることが難しくなりますから、たぶん社員同士での接し方がキツかったり、相手を責めたり、要求が一方的だったり、ということが日常的に起こっているのではないかと思います。会社というのはやっぱりチームなので、お互いがチームメイトのことを考えなくなったら、組織力は大きく下がってしまいます。
この状況を考えてみると、こんなスパイラルでつながっているのではないでしょうか。
○A社(良いスパイラル)
業績が良い(上がる)→ 余裕がある
↑ ↓
組織力が上がる ← 他人を気遣える
○B社(悪いスパイラル)
業績が悪い(下がる)→ 余裕がない
↑ ↓
組織力が下がる ← 他人を気遣えない
あるカウンセラーの方からうかがったことがあるのですが、「他人の相談に乗ることは、自分の心に余裕がなければできない」とおっしゃっていました。無理に多くの相談を受けようとして時間に追われたりすると、良いカウンセリングはできないので、ある程度余裕が持てるように、仕事量や時間の使い方を考えているとのことでした。
とはいっても、会社であればそんな自分勝手に余裕を持てる訳もなく、現実的にはなかなか難しい事です。でもスパイラルでつながっていると考えてみると、「卵が先か、鶏が先か」と同じで、どこから始めるかという話になります。
業績が上がれば、すぐ解決してしまうことかもしれません。でもそこが簡単にいかないならば、せめて出来るところから、例えば他人を気遣ってみることから始めると、業績アップにもつながっていくのではないかという気がします。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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