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3分で読める!社労士コラム~労使のバランス・オブ・パワー~第7回(フリーランス問題)

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最近、気になる報道がありました。

ますます強まる、事業主に課せられる労働者保護の規制。少子高齢化に伴う人口動態の変化という社会情勢の一方、労働者を「いくらでも代わりがいる」かのように乱暴に扱う事例が無くならないので、そうした規制が強まっていくのはやむを得ませんが、経営と労務の板挟みにまじめに悩んでいる事業主さんには言いたいことが山ほどあることでしょう。

そこで、そうした規制の対象外であるフリーランスを一人でも多くつかおう、国も副業・兼業を促進しているし・・という発想で、これまで社員にさせていた仕事をフリーランスに依頼する流れが、今後ひそかにすすんでいくのではないかと思います。

コロナ禍が無ければそうした流れはもっとゆるやかだったかもしれませんが、いわゆる「ギグワーカー」という存在が一気に注目を浴びるようになったことや、経営状況が急変した時に自社だけで何とかしようというのは無理ということを、労使ともが嫌でもわかってしまったので、今後フリーランスという働き方が加速していくことは間違いないでしょう。

では、実際にフリーランス活用を進めていくとして、仮にA社さんが新たにBさんというフリーランスに仕事を依頼することになった場合、先ずぶつかる壁は「指揮命令ができない」ということです。

フリーランスであるBさんとは、委託や請負として仕事を「発注」するわけです。そうすると、A社さんはBさんに仕事のやり方について口出しはできません。Bさんは、A社さんに対しては仕事の成果・結果に対してだけ責任を負えばいいからです。

Bさんに、簡単に状況報告させるくらいはいいでしょうけど、そこで「進み方が遅いからこうしろ」とか「そのやり方は認めないからこれでやり直せ」というところまで干渉してしまうと、実態として「指揮命令している」とみなされ、A社さんとBさんは「労使関係」と認定されてしまうことになるかもしれません。したがって、A社さんは使用者責任やマネジメントからは解放されますが、仕事の成果・結果があがってくるまで、言いたいことがあってもじっと堪えなければなりません。まったく口もきいてはいけないわけではありませんが、言い方にかなり気を遣わなければならないでしょう。いまどきは言動を簡単に録音されますし。

「そうはいっても、本人も自分の事を事業主と思っているんだからそれは本人の問題だろう」と言いたくなると思いますが、フリーランスが実は労働者と変わらない扱いを受ける問題は昔からありますし、世の中の流れとして「自己責任だから」と割り切ることも許されなくなってきました。厚生労働省も、フリーランス保護の専用ページを公開しています。今は簡素ですが、徐々に拡充されていくことでしょう。

経営者として、保護規制がかかることが感情的に理解したくないというところはあるかと思いますが、忘れてはいけないのは、雇用されていようと委託・請負であろうと、相手は「人間」であることです。したがって、雇用されてないから人間扱いしなくていいという理屈にはなりません。日本国憲法にあるように、人にはみな「基本的人権」があるのです。そこに異を唱えるのであれば、この国(同じ理念や法を掲げる国でも)で商売はできないと考えるしかありません。

ではフリーランスを使うメリットが無いのかと言えば、あります。それが「賃金」と「料金」の違いです。賃金には最低基準がありますが、料金には許認可事業などで一部規制はあるものの、基本的には当事者同士で合意すればいくらでもいいわけです。もちろん、独占禁止法や下請け法という別の文脈での規制は気にしつつですが。もちろん、優れたスキルがひろく流通するわけなので、そうしたスキルが手軽に手に入るという面も大きいでしょう。

整理すると、「賃金」は最低基準はある一方で指揮命令ができる、「料金」は自由である一方で口出しはできない、すこし乱暴ですが、こういうふうになるでしょう。

私としては、働ける方々が雇用もフリーランスもどちらもできるような世の中は大歓迎です。個々人の置かれた状況は様々なのですから、状況に合わせて雇用とフリーランスを行ったり来たり、あるいは両立することでより幸せな職業人生を送ることができると思います。もちろん、片方の働き方のみということもいいでしょう。

経営者としても、仕事を見直してみれば必ずしも雇用で対応しなければならないものばかりではないことに気づくことも多いと思います。アウトソーシングという手法は昔からありますが、アウトソーシングはブラックボックス化しやすかったり、ある程度のサイズ感のある仕事でないとコストが見合わないというデメリットがありますので、そうした点が身近なフリーランスだとクリアできることも多いでしょう。

副業・兼業、フリーランスという選択が拡がることは世の中の流れなので、逆らうよりはそれを受け入れるほうが、事業の維持・発展に資することは間違いありません。

引退した、超売れっ子だったお笑いタレントさんが言っていましたが、売れ続ける芸人と一発屋の違いは、世の中の流れに意図的に合わせているか、たまたま流れにマッチしたのかの違いとのことです。

事業は継続していくものですから、一発屋だといけませんよね(山師のように経営したいのならともかく)。

会社の中では、どうしても経営者が世界の中心という感覚になってしまいますが、世の中の流れにさらされるのは他の経営者と平等なのです。つまり、スタートラインやコースはみんな同じなのですから、スタートダッシュは遅れたとしても、少しでもコースからはずれないように、そして自分にとって負担の少ない走り方を見つけ出す努力をするのが生産的な発想だと私は思います。

子どもの頃に読み聞かしてもらった、うさぎと亀のお話を思い出してみましょう。うさぎと亀の一番の違いは何か?亀は、遅くともずっと歩みを止めなかった、だからゴールまでたどり着けたのです。

事業にゴールはありませんが・・あのお話を思い出すことで、雇用であろうとフリーランスであろうと、働く人と働いてもらう人との関係のバランスを平静に保ちながら、本来やるべきことに集中できるのではないでしょうか。

フリーランス問題について、社労士は雇用関係の専門家として、トラブル予防の観点からアドバイスができます。副業兼業、フリーランスは規制と考えずに、世の中のニーズの変化にすぎないと考えれば、前向きな気持ちで対処できます。事業の継続発展のため、一緒に頑張っていきましょう。

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