“無駄”と思えないから減らせない「無駄な会議」
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様々な業務効率化が進められる中で、特に「会議」はよくやり玉にあがります。
グローバル企業を対象にしたある調査によれば、管理職の1週間の平均労働時間は46時間で、そのうち会議で23時間、メールやオンラインのチャットで10時間を使っていたそうです。じっくり自分の仕事ができるのは、1週間で13時間しかないということですから、それではなかなか仕事がはかどらないでしょう。
こんな状況から、会議時間を短縮しようという話は当然の成り行きで、その取り組みは多くの会社でおこなわれています。よく聞くのは会議資料の簡素化や会議時間の制限などで、A4用紙1枚まで、パワポ禁止、60分以上の会議禁止、週の総会議時間数制限、会議室の予約時間制限などの対策がありました。他にも着席しない会議で時間短縮を図ろうとしたり、ウェブ会議で移動の手間を省いたりといったものもありました。
いずれも「まず“時間と手間の制限”によって無駄を減らそう」という発想です。
他の調査では、社内会議と会社業績の関連を調べたものがありました。
その結果によれば、1日の会議回数は平均で1.4回、それが業績向上している会社は1.7回と、積極的に会議をしている様子があります。ただし、業績が下がっている会社では2.0回と、それよりさらに回数が多かったそうです。
また、1回の会議時間を見ると、平均68.2分に対して、業績が上がっている会社は67.2分と少し短く、業績が下がっている会社は79.5分と、平均よりも10分以上長くなっています。
大きく違うのは会議の内容で、業績が上がっている会社では「意思決定」「問題解決」「アイデア出し」といった目的の会議が多いのに対し、業績が下がっている会社では「情報共有、報告の会議」が最も多くなっています。会議をやらないという会社もありましたが、これも業績が下がっている会社の比率が高くなっています。
つまり、会議は一定程度の時間は必要で、業績の上がっている会社では、何かを決める、議論するといった「目的のある会議」を時間にけじめをつけておこない、業績の下がっている会社では反対に「目的の不明確な会議」を長時間おこなっているということです。
ここからすると、ただ時間を制限して「会議をやらない」というだけでは、業績が下がる可能性もあるということになります。会議の中身をよく吟味しなければなりません。
ただ、「会議の中身を吟味しろ」といっても、そこにはかなりの難しさがあります。
社内会議の多くはリーダーやマネージャーが仕切っていますが、本人たちがそれを無駄と思っていることはほとんどありません。無駄に気づいていないことと、やっていることが無駄とは認めたくない気持ちの両方が考えられます。また、部下やメンバーたちは、今の状況が当たり前になっていて、無駄かどうかを考えること自体をやめてしまっています。
こんなことから、当事者に「会議の中身を吟味しろ」と言っても、時間や回数はほとんど減らせません。会社から指示する時間制限の取り組みばかりが多くなってしまうのは、こんな側面があります。
ただ、意外に効果があると思うのは、私たちコンサルタントなど社外の第三者からの指摘です。
私もいろいろな会社で社内会議やミーティングに参加しますが、「この会議の目的は何?」「この人数が集まる必要はある?」などと尋ねると、はっきり答えてもらえないことがよくあります。皆さん急にいろいろ考え始めて、実際にコミュニケーション手段を変えて会議自体をやめたり、出席者を絞り込んだり、テーマを見直したりします。
意義を見失ったような会議はどこでもありますが、そういうものだという思い込みが、客観的な視点からの指摘で解けるのでしょう。
会社の仕組みの中には、理由が説明できなくなっているのに、「今まで通り」といって、ただ惰性で続けていることがたくさんあります。
会議の効率化などを進めるには、「これが当たり前」「やるのが当然」といった、自分たちの思い込みから解放されることが、一番大切なように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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