新聞広告やチラシの間取りを見るのが好きな人は結構多いと思います。単に壁や窓が記号化されて書かれてあるだけなのに、そこに自分の人生を当て嵌めて、これは合うとかこれはダメとか勝手に採点しています。
新聞チラシの間取りを作る側の心理はどの様なものでしょう。
建築主がまだ決まらず、敷地だけを見て、建物をプランするのは思う以上に難しい作業なのです。まずクライアントの顔が見えません。どの様な感性で、家族構成はどの様な構成で、年齢層はどのくらいで、購入出来る額はどの辺が限界で、etc・・・建築の技術的な能力以上に、購買層の心理状態を見極める能力を問われます。
不特定多数の人に認めてもらう事が重要になり、奇抜なアイデアや斬新なデザインは敬遠されます。一般受けするプランやデザインがどうしても多くなり、保守的な間取りがチラシを埋めます。多くの間取りは私がこの世界に入った頃と殆ど変っていません。ライフスタイルは驚くほど変化しているのにです。
この仕事をし始めた頃には、二世帯住宅が過半でした。来客の為に応接室を設ける事も常識でした。パソコンなんて勿論ありませんでした。核家族が定着し、来客を家でもてなす習慣が無くなっても客間が存在するのは何故でしょう。パソコンが一家に数台ある家も珍しくないのに、パソコンをする空間が無いのは何故でしょう。下駄箱に靴が納まり切らないと判っていてシューズクロークを付けないのは何故でしょう。
これら全ては、一般受けの踏襲による結果なのです。ライフスタイルが変化しているにも関わらず、一般受けする間取りしか紙面に載せない為、受け取る側もこの不自然さに気付いていないのです。
激安を謳うハウスメーカーの間取りほど保守的な間取りが多い様に思います。最も大衆受けする間取りが最も数量をこなせる為、最も仕入値を下げられる為でしょう。言い換えれば保守的な間取りを選んでいてはどれだけお金を掛けても、安譜晋に見られてしまうという事になります。
もう少し掘り下げれば、間取りをしっかり考えて、一般受けしなくても、自分たちの住み良い間取りを考えれば、使用する材料は平凡なものでも、資産価値の高い家を造る事につながるという事です。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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