ただ単に安いと言われている住宅を造っているハウスメーカーと云うのであれば、知名度・ブランド力に欠けるハウスメーカー全てが安売り志向に成らざるを得ないのが現状かと思います。
ハウスメーカーの戦略として、消費者が何に注目し何を重要と考えているかを調査して自分達が販売しようとしている客層を絞り込んで、総合的に価値観の高い家を造ろうとする戦略です。
もっと簡単に云えば、子育て最中の30代の家と子育てを終えた50代の家では求めるモノが異なります。それで30代の家の方が50代の家より需要層が大きいとなれば、50代の為の家はばっさりと切捨てられ、30代に特化した家が割安な値段で売り出されます。
と云っても、30代全ての方に魅力のある家になっている訳でもありません。凡その客層の絞り込みは出来ても、人間それぞれ顔カタチが違うようにライフスタイルは違うのです。どの様なライフスタイルにでも合うような家となると、何の変哲もない特徴の無い家になってしまいます。その様な家は出来た直後こそ新しくて見栄えがしますが、数年もすると周囲にもっと新しい家が建ってどんどんと古ぼけていき、ローンを完済する頃には、飽きてしまって取り壊して建て替えを検討する様な事態になってしまいます。物理的な耐用年数は残っていても経済的な耐用年数が先に来てしまうのです。
またローコストの定義ですが、単に初期投資としてのコストの安い家をローコスト住宅と定義してよいのかと云う問題にぶつかります。簡単に云えば1500万円の家で30年しか持たない家と2000万円で50年持つ家では前者は年当たり50万円の償却となり後者は年当たり40万円の償却となり、明らかに後者の方が経済的です。
目標とするのは1500万円で50年持たせる家を志向する事ではないでしょうか。通常では2000万円かかってしまう家を500万円削ろうと思えば、建築材料の全てを初めから見直し、限りある予算をどの様に配分していくか、専門家と共同で見直していく作業が必要となります。言い換えれば500万円分の努力を建築主に強いる作業が必要だと云う事です。しかし家造りに建築主も参加すると云う作業は、家そのものに愛着が生まれ、その努力が子や孫に伝わり愛着のある家として住み継がれるものだと考えています。
建築士も工務店もハウスメーカーもマジシャンではありませんので、何かうまい事をして500万円浮かしてやろうみたいな芸当は出来ません。ローコスト住宅に分類されるハウスメーカーを調べるよりも、どうすれば自分の希望の予算で、愛着の沸く子々孫々住み継がれる家を建てられるかを、建築士と一緒に考えませんか?
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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