宗教法人がラブホテル経営? - 税務全般 - 専門家プロファイル

菅原 茂夫
菅原茂夫税理士事務所 代表
東京都
税理士

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対象:税務・確定申告

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宗教法人がラブホテル経営?

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9月4日、東京地裁において、ある租税裁判に対する判断が行われました。

合計30社超の法人を所有する個人Xがおり、そのグループの中に宗教法人Aが含まれていました。

宗教法人Aは、Xグループ内で営むラブホテル事業に関する土地および建物を全て保有していましたが、ラブホテル事業の経営自体は、同じグループ内の別法人で、旅館業経営許可を取得していたB社が行っていました。

このラブホテル事業に関する損益はB社に帰属するものとして、宗教法人Aの収益事業から除外して申告を行っていました。

これに対し税務当局は、本件ラブホテル事業の損益は宗教法人Aに帰属させるべきであり、それを行わなかったことは「仮装・隠ぺい」にあたるとして法人税更正処分を行ったというものです。

「実際に経営しているB社の損益で問題ないのでは?」と思ってしまいますが、税務当局の主張はそうではありません。

税法には「実質所得者課税の原則」というものがあります。

法人税の納税義務者とは事業から生じた収益の帰属主体で、基本的には法律で判断されますが、その者が単なる名義人であると認められる場合には、実質的にその利益を享受する者に課税するという考え方です。

この原則に基づき、税務当局は本件ラブホテル事業に関する損益は、全ての施設を所有している宗教法人Aに帰属すべしと判断したようです。

これに対して、宗教法人Aは自ら旅館業経営許可を受けておらず、施設を所有しているに過ぎないため経営主体ではないと主張しました。

双方の主張が対立する中、東京地裁は

・ホテル事業の経営方針決定権限は個人Xが掌握していること

・ホテル施設の使用権限を有しているのは宗教法人Aのみであること

・ホテル従業員に係る雇用関係が不明確であること

・(適法・違法とは関係なく)許可を得ていなくとも実際上、旅館業を営むことは可能であること

として、税務当局に軍配を上げました。

なお、この事案は東京高裁に係属中となっています。

グループ会社を複数所有されている方、「実質所得者課税の原則」という考え方があることについては十分にご注意ください。

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