男から考えると部屋は広い方が快適です。大空間にドンと座ってその場を独り占め出来るのはある種の快感です。しかし、女性の側から考えるとそうでも無いようです。
私の家の理想は、アメリカの都市の郊外に良く見られるコンテンポラリーな、インナーガレージのある住宅です。子供の頃に、アメリカのホームドラマを見て育ちましたから、あの豊かさは憧れの的でした。道路から玄関(foyer)まで最低20mほどのアプローチが続いていて両側は芝生を刈り込んでポーチには白い円柱を配置して、ロッキングチェアを玄関扉横にディスプレイします。
背の高い玄関扉を開けると、正面に優雅な曲線で構成された階段があり、その奥にリビングが広がっていて、シャギーカーペットが敷き詰めてあります。暖炉をデザインしたパーテーションの裏側はダイニングになっていて、8人ぐら座れるアンティークなテーブルが置いてあります。その奥は独立したキッチンで業務用冷蔵庫と変らないくらいでかい冷蔵庫の中にはいつも食べ物が詰まっています。二階のベッドルームは完全に独立した個室でそれぞれにウォークインクローゼットとバストイレが付いています。
結婚するまでは、真剣に将来はこんな家に住むんだと決めていました。この夢を実現させる為に都会には絶対すまない、郊外の(土地値の安い)広々とした土地ばかりを探していました。それでも理想の土地には手が届かず、ステップバイステップで広い土地に移り住んで資産を形成しようと努力しました。半ばそれは実現しましたが、未だに若い頃理想にしていた家には住めていません。
と云うか、理想の家に手が届いても維持出来ない事に気付きました。
芝生は誰が刈り込んでいるのか。白い円柱は汚れたら誰がペンキを塗るのか。優雅な階段の掃除はいつするのか。シャギーカーペットはどうして洗うのか。大きな部屋を誰が掃除機を掛けるのか。誰が何箇所もあるトイレ掃除するのか。
私と嫁さん共に忙しく社会活動を続けていては絶対に家の維持管理に手が回りません。今の生活を続けていくには、今住んでいる理想の家よりも随分こじんまりした家が合っているのです。
今のライフスタイルを考えて理想の家とは・・・と考えると大きいばかりが快適な家とは云えません。こころのゆとりとなる部分を残して、負担となる部分を排除していく。そう云った方法で間取り構成を見直していくとまた新しい間取りが見えてきます。
このコラムの執筆専門家

- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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経済的な熱損失計算(性能基準)で、次世代省エネ基準を取得できる提案をします。
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また、IAU型免震住宅設計資格取得者として、免震住宅等の相談も行っています。
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