昭和30年代の古い新聞の社説の一部です。「イタリア人は走ってから考える。
ドイツ人は考えてから走る。イギリス人は走らずに歩きながら考える。我々日本人は
イタリア人に似ているようだ」この話しは小学生のとき、担任の先生から聞いたものです。
先生はこうもいいました。「日本人は、あまり深く考えずに突っ走る傾向にある。
太平洋戦争でも一人の指導者が右を向けと云えば、何も考えず右を向いてしまったから悲惨な結果に終わったのだ」時代はその通りの結果になってしまいましたので、先生の仰った事は間違いではないと思います。しかし、その後の私の人生に大きく影を落とす事になりました。
何か新しい事を始める時には必ずこの言葉を思い出してしまうのです。自分の将来に対して良いと思うから新しい事をするのに、何故か軽率な行動をしているのではないかと警戒の念が消えないのです。土地を買う時、家を建てるとき、家を売るとき、また新しい家を買うとき、この全てを私は経験しましたが、常に先生の言葉に悩まされ続けました。
全ての条件が揃って、後は決断するだけなのに、自分の心の中に何人もの自分がいて、それぞれがバラバラな意見を云うのです。
そんな中で得た決断の方法があります。凄く単純なのですが「考えるより先ずカタチを造ろう」と云うものです。自分の心の中に湧き上がる様々な懸念に100%回答が出るまで行動せずにいれば、他の誰かに先を越されてしまいます。100%を目指すのではなく、80%完成すればとりあえずカタチにします。そこで得られた結果に修正を加えれば良いのです。土地を買う時もそうでした。100%満足して買った訳ではありませんが、買わないと、実際には懸念していた事が懸念通り大変な事だったのか、そうでもなかったのか判らないのです。「住めば都」とは良く云ったもので、買う前に懸念していた殆どの事は杞憂でした。
それが高じて、100%を喫して買った物件でもなかったものですから、転売する時はあまり躊躇はしませんでした。今私は満足して今の家に住んでいますが、建替えや転売する時期が来ても、それほど躊躇することはないと思います。
決断するメカニズムを持っていない人は100%にこだわり過ぎているのです。茂木健一郎も最近の著書で、まずカタチにすることの重要さを説いています。一生に一度の大仕事とか、終の棲家とか思わずに、とりあえず80%の条件が揃えば走り出すべきです。
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このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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