(続き)・・そのように常に作り直されている骨ですが、やはり年齢とともに衰えていくのは避けられません。加齢によって骨芽細胞の働きが鈍くなり、骨を形成する能力が低下することに加え、特に女性の場合は閉経後にエストロゲンが減少することで破骨細胞の活動が異常に高まり、骨が溶けるスピードが増して骨量が急速に減少します。男性も女性ほどではないにせよ、加齢に伴い骨が衰えていく傾向にあります。
それに加えて高齢者ではカルシウムの代謝に異変が生じます。食事量の減少に伴いカルシウムの摂取量が低下することだけでなく、腸からのカルシウムの吸収に欠かせないビタミンDの体内合成が、日光を浴びる時間の減少に伴い低下すること、ビタミンDの肝臓や腎臓に於ける活性化能が低下することにより、体内のカルシウムの絶対量が不足しがちになります。そのために骨量の減少に拍車がかかるのです。
それではどのような人が骨粗鬆症になりやすいのでしょうか。一つには極度に痩せている人が挙げられます。特に若い女性は美容目的から極度のダイエットに走る人が少なくありませんが、食事量が少ないとカルシウムやビタミンDの摂取量が少なくなります。また同じ運動や日常活動をしても標準体重の人に比べて骨への負荷が少なく、それだけ骨があまり鍛えられないということになります。
それだけでなく、極端に痩せた女性はしばしば生理が止まってしまい、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下します。そうすると若い女性であっても閉経後と同じようなホルモン環境に陥り、いずれ骨密度が低下することになります。実際に20代の女性であっても60代並みの骨密度を示すことがあり、そのような方はちょっとした外圧で容易に骨折してしまうことがあるのです。
それでは逆に太っていた方が骨は強くなるのでしょうか。確かに体重の多い方が骨への圧力が大きいために、骨密度は増す傾向があります。しかし過度に太った場合には、関節の軟骨に大きな圧力が加わり、軟骨がすり減って痛みや障害の原因となります。また太ると糖尿病になりやすく、骨に対しても明らかに老化を促す要因となります。総合的に考えると、肥満は決して健康に良いとはいえないのです。
体重とも関係しますが、運動不足で体をあまり動かさない人も骨が弱くなる傾向があります。骨は適度に刺激を加えることで強化されますが、刺激が極端に少ないと骨芽細胞の活動も弱まり骨密度が低下します。現代人に骨粗鬆症が増加した最大の要因の一つは、工業化や情報化が進み、交通機関が発達して、我々が体をあまり動かさなくなったことです。骨の健康のために、我々はもっと体を動かす必要がありそうです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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