やる気を生み出す動機づけには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2つのタイプがあるとされます。
このうち、勉強しろと叱ったり、できたらご褒美をあげるなど、賞罰を使い分けて人を動機づける事を「外発的動機づけ」といいます。外発的動機づけは短期的には有効ですが、この動機(報酬を得るためにやる、それをやらないと怒られるからやるなど)では、手っ取り早い方法を選ぶようになったり、チャレンジしなくなったり、人の見ていない所でサボるようになるなど、長期的に考えると様々な弊害が出てきます。報酬を得ることや罰を回避する事が目的で、行動はその手段となりますから、常に誰かが見ていてアメやムチを与え続けなければ、行動しなくなっていきます。
これに対して、外的な報酬が無くても、行動することで得られる楽しさや満足感による動機づけを「内発的動機づけ」といいます。内発的に動機づけられた人にとっては、行動する事自体が目的であり、そこから得られる達成感、充足感が報酬になります。楽しいから積極的に参加し、自発的に学習します。内面から湧き出る意欲という事です。
個人目標を設定してこれを上司が把握管理し、達成度合いによって報酬を与えるというのが成果主義ですが、仕事を“外発的動機”によって鼓舞しようという側面があり、それゆえ仕事の本来の楽しさや喜びなど、“内発的動機”を奪う制度であるともいえるように思います。成果主義でかえって仕事に対するモチベーションが落ちたという報告がされるのも、こんな所が原因かもしれません。
私は「内発的動機づけ」を基本的に重視すべきだと思いますが、「外発的動機づけ」を一方的に悪と考えるべきではなく、バランス良く活用する事が大切であると思います。バランスを欠いた事が成果主義の行き詰まった一因ではないかと思います。何事もバランスは大事ですね。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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