平成21年4月から、毎年誕生月に「ねんきん定期便」(以下、「定期便」という)が届くようになりました。
50歳以上の人の「定期便」には、現在加入している年金制度に60歳になるまで加入するものと仮定した年金見込額が提示されています。
ところが、これまで払ってきた保険料の割に、「老齢厚生年金」の額が異常に少ない人がいます。それは、厚生年金基金(以下「基金」という)の加入歴がある人です。
基金は企業年金の一種ですが、老齢厚生年金の一部、というより大部分を国に代わって支給する(「代行」という)仕組みになっています。
代行部分に、基金独自のプラスアルファ給付が加わるので、国から支給される(日本年金機構で管理している)老齢厚生年金と、基金の年金と合わせると、基金加入歴のない人より受給額が多くなるはずです。
基金の分は退職時に一時金で清算したから残っていないはず
と思っている人が結構いますが、清算したのは基金独自の「加算部分」というものであって、代行部分は基金に残っています。
基金から支給される年金額は、日本年金機構で提示する年金見込額には含まれていません。
「ふざけるな!」と叫びたくなるくらい少額になっているのは、そのためです。
50歳未満の人の「定期便」に記載されている「これまでの加入実績に応じた年金額」は基金から支給される分も含まれているため、50歳になって届いた「定期便」で年金見込額が減って戸惑った人もいることでしょう。
実例を挙げると、厚生年金加入期間の320月(26年8か月)がすべて基金加入期間という人で、老齢厚生年金が約10万円(年額です)となっていてびっくりした、というケースもあります。
こんな極端な金額が出ていたらさすがに「おかしい」と思うでしょうが、微妙な金額の場合は気づかないかもしれませんね。
もう一つの例は、大卒で転職歴のある人ですが、60歳までサラリーマンを続けたと仮定した年金見込額が約45万円と提示されていました。
「こんなに少ないのか!?」
と、年金制度に対して怒りを覚えたのですが、「何かの間違いだ」とまでは思いませんでした。
その人は、転職するときに基金の加算部分を一時金でもらっていたので、基金の年金があるとは思っていなかったのです。
以上のことから、あまりに少ない年金見込額にショックを受けた人は、「定期便」の「年金加入履歴」を確認してください。(厚生年金基金加入)とカッコ書きがしてありませんか?
ただし、現在送付されている定形封筒で届く「定期便」には最近の月別状況しか載っていないので、昔の加入歴はわかりません。
(35歳、45歳、58歳の節目年齢の人には、全加入期間の加入履歴が送付されます)
平成21年度に届いたA4サイズの封筒の「定期便」には、全加入期間が載っていますが、見つからない人は、年金事務所や街角の年金相談センターで調べてもらうことができます。
また、日本年金機構のインターネットサービス「ねんきんネット」を利用すると、全加入期間の履歴が、基金に加入していた期間の情報も含めていつでも確認できます。
〈ねんきんネットURL http://www.nenkin.go.jp/n_net/ 〉
◆基金のことは基金に確認を
基金から支給される年金の見込額を知るには、加入していた基金に問い合わせてください。
加入していた基金の名称は、各自で保管している「厚生年金基金加入員証」に記載してあります。
加入員証が見当たらない人は、現役で加入している場合は会社で聞いてみてください。
昔加入していた基金の加入員証がなくて、名称もわからない場合は、年金事務所または街角の年金相談センターで調べてもらえばわかるようになっています。
なお、基金加入期間が短い人や、加入していた基金が解散してしまった人の年金は、「企業年金連合会」から支給されます。
〈企業年金連合会HP http://www.pfa.or.jp/ 〉
基金加入歴のある人の相談事例については、別の媒体で執筆したことがありますので、こちらもご参照いただければ幸いです。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20091022/1029785/
このコラムの執筆専門家

- 服部 明美
- (埼玉県 / 社会保険労務士)
- 社労士はっとりコンサルティングオフィス 社会保険労務士
お客様の「こころ」に寄り添う社労士でありたい
職場のメンタルヘルスと年金関連を得意分野としております。就業規則の作成や見直し、休職・復職規程、衛生委員会の運営指導、社会保険制度説明会等、原稿の執筆や講演、社員研修の講師依頼など、お気軽にお申し付けください。
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