確かに自分が自分のことに精一杯では、他人の事などかまっている場合ではありません。最近、企業内での人間関係が希薄になった、人材育成がおろそかになっているなどと言われますが、一つの業務に関わる人員は減り、経験を積ませたくても作業効率が落ちるからとOJTの機会すらなかなか与えられず、結果として一人ひとりの負荷が高くなって「心の余裕」が失われている現状のなかでは、当然の結果なのかも知れません。この点からいえば、組織内の人間関係や人材育成の立て直しのためには、いかに「心の余裕」を生み出すかということもいえるように思います。
「心の余裕」というのは、個人の主観的な受け留めの部分が大きく、個々のキャパシティや能力差、経験差、果ては性格にまで左右されるので、一概に言うのはなかなか難しいと思います。ただ、心の余裕につながる事柄というのは結構たくさんあって、単純に休みを取らせる、悩みを聞く、アドバイスをしてあげるといったことだけでなく、知らなかったことを知る、新たな経験から自分なりの物差しを持つ、面識が無かった人と話せるようになる、などということも広い意味での心の余裕につながります。
そうだとすると、企業内で出来る施策としては「研修などを通じて知識を与える」、「OJTを通じて新たな業務経験をさせる」、「日々のコミュニケーションでお互いをより深く知る」、「オフタイムでのパーティーや飲み会、その他の交流機会などでいろいろな人と接する」など、非常にオーソドックスな方法になります。
「心の余裕」を取り戻すために企業ができることというのは、結局今まで当たり前に行われてきたこれらの事に、改めて価値を認識して取り組んでいくことに尽きるのではないかと思っています。
最後に心の余裕とは少し違うのかもしれませんが、前に見たテレビ番組で、ホームレスの方が病気になった他の仲間の事を心配して、相談機関を訪ねたりカンパを集めたりしている姿を見たことがあり、自分も極限に厳しいはずなのに、そんな中でも他人を気遣うことができるということにとても感心したことがあります。「心の余裕」の本当の根本は、施策とか仕組みではなく、個人個人が持つ気持ち次第ではないか、とも思います
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
03-4590-2921
「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム
「管理職になりたくない」の気持ちを変えられるか(2024/03/20 21:03)
有名店の店主がいう「得する客」の話(2024/01/17 23:01)
「厳選採用」とは反対のやり方(2023/12/13 18:12)
身近には意外に少ない「ダメ出ししてくれる人」(2023/11/30 11:11)
「アットホームな会社」とは何なのか(2023/11/15 18:11)