- 牛田 雅志
- ブレインリンク・コンサルティング株式会社
- 税理士
対象:会計・経理
現在の事業を加速度的に進化させていくためマーケティング発送を加えませんか。お客様に喜ばれるものを提供するという品格経営理念の上に立てば、マーケティングの思考、ノウハウ及びテクニックは非常に効果的に活用できます。
私個人の経験ですが、笑わないでちゃっと聞いてください。
ものを買うのはなんのため
昭和12年東京市の下町風景を描いた「墨東綺譚」(永井荷風著)という初老の物書きが主人公の小説を読んでいたらこんな文章に出会いました。
「ビールで酔(エイ)を買い、二・三時間を過ごし・・・」
私の想像力は大いに膨らみます。
ビールを飲みながら、くだをまいている姿、ひとり哀愁漂う姿、はたまた酔いつぶれてテーブルに突っ伏している姿など。「酔」という言葉から主人公の喜怒哀楽を楽しく空想できました。
「ビールを飲んで、二・三時間を過ごし」という文章なら、多様なイメージは湧かなかったでしょう。
私がビールを買うのは何故だろうと自問してみました。
お茶の代わり?
のどを潤すため?
アルコールを体内に入れるため・・・?
スーパーで缶ビールを見て、「あっ。家の缶ビール切れてたなぁ。買わなくっちゃ!」と思った時に浮かぶ映像は、缶をプシュっと開け一口目をゴクッっと飲んでプハッっと息を吐きながら「美味イっ」と叫んでいる姿です。
それは楽しそうに嬉しそうに気分よく飲んでいる自分の感覚です。
「そうか、ビールを買うのは、自分にとって幸福な感情を得るためなのだ。」
ものを買うのは、そのもの自身に魅力があることは当然ですが、買った後に感じる心地良さを得るためでもあります。
プロ使用の調理器具を買う時には、うまく料理ができるのは当然のこととして、オーナーシェフになってお客様の舌を唸らせている自分を想像して「ウキウキ」します。
外車を買う時には、高スピードや安心設計は当然のこととして、高級ホテルのロビーに車を横付けにしハリウッド女優をエスコートする自分を想像して「ニヤニヤ」します。
結婚指輪を買うときには、綺麗で素敵な輝きは当然のこととして、彼女のうっとりと恥ずかしそうに指輪を受け取ってもらうシーンを想像して「デレデレ」します。
「ウキウキ・ニヤニヤ・デレデレ」という快感を得たくて人はものを買うのです。
ウキウキを提供しているのは、何も調理器具だけではありません。大切な人を自宅に招く時に買うワイン、卒業記念に親友と行く旅行、就職して初めて持つ万年筆など、様々なものが存在します。
逆に言えば、それらすべての商品サービスは「ウキウキを提供する商品群」として、市場の中でお互いにライバルであり競争相手になっているのです。
したがって、自社商品やサービスは同じ業界だけに競争相手がいるわけではありません。その商品サービスを買った後にお客様が得る「感情」の同じ業界にライバルが存在するのです。
私の属する税理士業界は、法律家としてお客様の経営課題解決の助言をしてお客様にホッと安心をしてもらっています。
税理士がお客様の経営課題解決を助言する業界とすれば、弁護士など士業といわれている方々や売上増大・コスト削減など専門的コンサルティング会社などが競争相手になるのかもしれません。
でも、税理士がお客様にホッと安心してもらう業界だとすれば、ライバルは占い館にいるいろんな占い師さんや優しい母性でつつんでくれる女将さんのお店になるのかもしれません。
商売繁盛マーケティングでは、
「自社の商品サービスの特徴や機能を磨く」だけでなく、
「お客様の心地良い気持ちを想像する感性を磨く」と考えます。
私は、仲間と一緒に飲むビールが一番美味しく幸福に感じます。汚く狭い場所でもおつまみがたくあん漬けだけでも全く構いません。そんな庶民的なシーンのビールCMを放映してくれる会社があれば、大応援したいなぁ〜とビールを飲みながら楽しく空想しています。